日本計量新報一面記事です。 2018年07月15日号(3201)1面 2018年07月01号(3200)1面 |
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その20- ドイツ人と計測技術の導入 端子台に及ぶまでドイツ独特の技術レベルの高さに敬服したものであった。 ドイツ人と計測技術の導入 可動線輪の調節計に驚く 計量整備掛としてのもう一つのテーマに、転炉廃熱ボイラーの計装工事があった。 オーストリアのシーメンス社から調整指導に2人の技術者が来て、いろいろと教えてくれた。大学時代のドイツ語を思い出しながら、習ったものだ。 わが国では多くのものが電子化している時に、可動線輪の計器シリーズで、調節計までもが可動線輪であるのには驚いた。発信器にはリングバランスやベローズも使われていて、どれもが大きくて、堅牢にできているのに感心した。 その他端子台に及ぶまで、誰でも容易に触れるように工夫されていて、ドイツ独特の“こだわった”ところでの技術レベルの高さに敬服したものであった。 楽しい交わり 彼らは、技術者としての確固たるプライドと自信を持っていて、横から我々が提案してもガンとして受け付けないところがあった。そればかりか「技術者たるものは、かくあるべきだ」と我々に諭してくれた。 そんな彼らは、製鉄所から少し離れた丘の上にある外人専用の施設に宿泊していた。夕方になると一緒に食事をしようと誘うのでついて行き、食事を楽しんでいた。美味しいステーキも出て、何とも良い気分であったが、何事も度重なると何とやらで、ある日、厚生課から電話があり「一緒についてくる社員は時々にして欲しい」との由。 この据付が終わりに近づいた頃、仲良くなった2人の技師を我が家に招いて、食事を差し上げようと考え、家内の賛成を得た。私も買い物や部屋の整理に協力し、その日となった。2人とも背も高いし、一人は太ってもいたので、我が家が一段と狭く感じられた。室内の置物や家内の手料理を喜んでもらったのは良かったが、何分6畳、4畳半の狭い家、彼らが押入れの襖を指して「あの向こうが寝室か?」と尋ねたのには赤面した。 導圧菅の凍結 廃熱ボイラーとは、転炉の溶銑に酸素を吹き込む時に発生する高温ガスを燃料とするボイラーである。急激な発熱に応じてレベル制御、給水制御をせねばならず、制御系としては厄介なものであった。従って、転炉共々オーストリアからの輸入であったのだ。 この転炉が立ち上がった初めての冬、突然夜中に制御不能で運転が止まるという事故が起こった。夜中に呼び出され駆け付けたが、原因が判らないので対処もできず。1時間経ち2時間経ち、300tの溶鋼をどうするか、周りから責められ急がされ……ダメだと思いつつも薬缶に湯を沸かして、屋外に設置された圧力計の発信器に走った。 導圧菅に湯をかけたのである。途端に配管中を蒸気が流れる音を聞いた時の喜び。思わず「やった!」と叫んだ。蒸気本管から圧力を取り出して発信器にいたる導圧配管が、急に襲ってきた寒波のために凍結していたのである。後から聞いたのであるが、建設工事の最中、計装配管の保温まで気が回らなかったのだそうだ。 (つづく) 私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その20- ドイツ人と計測技術の導入 端子台に及ぶまでドイツ独特の技術レベルの高さに敬服したものであった。 |