日本計量新報一面記事です。 2018年09月09日号(3208)1面 2018年09月02日号(3207)1面 2018年08月26日号(3206)1面 2018年08月12日号(3205)1面 2018年08月05日号(3204)1面 2018年07月29日号(3203)1面 2018年07月22日号(3202)1面 2018年07月15日号(3201)1面 2018年07月01号(3200)1面 |
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その26- 計測器をあえて設備しなくてすませる 「ハス切り」になるという原因は装置がさずかに横に動くとだったのでラインと装置のセンターを取り確かな据付をして対応 計測器をあえて設備しなくてすませる 測り屋大繁盛 現場から、これを計って欲しい、何とか安いはかりは無いのか、簡単に量れないか……というたぐいの話はどこでもよくある。計測機器を見つけて見積もりを取ってあげると話はそこまで。メリットが出ないから買えないと言う。こちらも、そういうことを見越して、見積りを作ってやることもあるが、お互いに無駄なことである。 工場の精整ラインに鋼板を定尺に切っていくシェアーという機械があった。1分間に10枚前後であったろうか、刃自体が流れるごとく動きながら切ってゆくのでフライングシェアーといっていた。その検査担当から「切った板に斜(はす)切り」が出るという。斜めになっているので板の対角線を測ると長さが異なるという。切り出した板をサンプリングしてチェックするのに手間がかかる、簡単に測定する方法は無いのか、というものだ。当時は自主検査ではなく、運転と検査が分かれていてお互いが競っていたころである。 見抜く力 検査担当に、切り出した鉄板から「ハス切り」をチェックする測定方法を聞かれたが、しかし、そのような特殊な測長機は無いし、動いているものを素早く測るのはなかなか難しい。レーザー技術の応用、パターン認識等を駆使してもそう簡単には測れそうにない。こんな時は現場を見るのに限る。 私は入社以来「困った時は現場に行け」をモットーとして来た。時間を見つけて現場に通い、「ハス切り」はどんな時に発生するのか、板厚は、板幅はとオペレーターに聞く。 観察・観察を続けていると、切る瞬間に装置が僅かに横に逃げるかの様に動いているのに気付いた。知見した内容を伝えて、機械整備の仕上げ職に来てもらい一緒に見てもらったところ、このラインのセンターと装置のセンターにずれがあること、据付に緩みが出ていることが判った。 早速運転の担当に連絡し、ラインを休止させ、センターから取り直して据付の再チェック。以来「ハス切り」は出なくなった。 検査からも、運転からも喜ばれたものであった。高価なレーザーの長さ測定装置を買わずとも、今後のチェック用として、オペレータに2mの直尺1本を渡して事は収まった。 元を正すのが先 これは典型的な一例であるが、工場でキッチリやれていないところで異常が出る、その現象を捉えるための、計測・計量が要望される場合がある。似た話をすると、板に出る傷を自動で検出する方法を考えるよりは、傷を出さないようにするのが先である。 周期性をもって出てくるロール傷ならばそのピッチを測って、それを発生させているロールを点検するのが先である。 操業や検査の連中は「それでも出る」と言う。計測屋たるもの「過剰なサービスは禁物なり」の喩(たと)えである。 (つづく) 私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その26- 計測器をあえて設備しなくてすませる 「ハス切り」になるという原因は装置がさずかに横に動くとだったのでラインと装置のセンターを取り確かな据付をして対応 |