計測トレーサビリティ物語(2)
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計測トレーサビリティ物語-新 トレーサビリティのすすめ-(2) 計量計測データバンク編集部
計測トレーサビリティ物語-新 トレーサビリティのすすめ-(2) 計量計測データバンク編集部2024-06-24-measurement-traceability-story-part-2-
(大見出し)
計測トレーサビリティ物語(2)
-新 トレーサビリティのすすめ-
[写真]株式会社東亜計器製作所のJCSS認定書
(リード)
本文書は「計測のトレサビリティ物語」(新 トレーサビリティのすすめ)である。計測のトレサビリティの定義とその関連文書は前述のとおりであるからご覧いただきたい。この項はそうした定義と異なる説明をするデジタル辞書があることから、それらを取り上げて一覧にした。言葉を総合して解釈することなく、自己の領域の知識で処断するという傾向が明瞭である。以下は各種のデジタル辞書による「トレーサビリティ」の解説である。
(大見出し)
各種のデジタル辞書による「トレーサビリティ」の解説
(本文)
本文書は「計測のトレサビリティ物語」(新 トレーサビリティのすすめ)である。計測のトレサビリティの定義とその関連文書は前述のとおりであるからご覧いただきたい。
この項はそうした定義と異なる説明をするデジタル辞書があることから、それらを取り上げて一覧にした。言葉を総合して解釈することなく、自己の領域の知識で処断するという傾向が明瞭である。
以下は各種のデジタル辞書による「トレーサビリティ」の解説である。
A、トレーサビリティとウィキペディアの解説
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』はトレーサビリティをどのように説明しているか。
トレーサビリティ(英:traceability)とは、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産についての情報や、どのような経路で運ばれてきたかなどの流通についての情報を消費者自身が確認できる仕組み。QRコードなどで読み取る。
1、トレーサビリティ(計測器)
計測機器の、標準器に対する精度を確認するための仕組み。
2、トレーサビリティ(流通)
流通において生産者情報等を伝達するための仕組み。
a、もののさまざまな情報をコード体系を整えて、移動の時間、場所、それをトラッキングイベントごとに記録すること。その後そのデータを利用してトレースバックで原材料や生産情報を得たり、トレースフォアードとして出荷後、消費している人まで追う事ができる。
b、トレーサビリティ(英:traceability)とは、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産についての情報や、どのような経路で運ばれてきたかなどの流通についての情報を消費者自身が確認できる仕組み。QRコードなどで読み取る。
B、ウッキペディアによるトレーサビリティ(計測器)
1、「トレーサビリティ(計測器)」
計測機器の、標準器に対する精度を確認するための仕組み「トレーサビリティ(計測器)」として次のように述べる。
トレーサビリティとは、「不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果または標準の値の性質。基準は通常、国家標準または、国際標準」と定義されている(JIS Z8103:2000計測用語より引用)。
過去のJISでは、「標準器又は計測器がより高度の標準によって次々に校正され国家標準につながる経路の確立している度合」と定義されていたが、ISOとの整合性を取るために、上記のように変更された。
a、トレーサビリティチャート
トレーサビリティチャートとは対象とする校正に用いた機器の校正経路を記載した書類である。単にトレーサビリティと表現した場合、この書類をさすことが多い。しかし、このチャートは必ずしも計測器のトレーサビリティを保証するものではない。
校正事業者の審査機関等(JCSS、A2LA等)より審査を受け、国際標準化機構および国際電気標準会議が定めた校正機関に関する基準(ISO/IEC 17025)の要求事項に適合していることが確認され、校正事業者として登録された場合は、認定を受けた範囲内で審査機関等のロゴが入っている校正証明書を発行することができる。このロゴがトレーサビリティを保証しているため、トレーサビリティチャートの必要がない。
そもそも、トレーサビリティチャートはISO9000などの品質マネジメントシステムが普及したときに標準供給の方が追いつかず、審査機関等のロゴが入っている校正証明書を得ることが困難であったため暫定対応として行われた措置であり、JCSS等のシステムが整った現在では、トレーサビリティチャートを使ったトレーサビリティの保証は、ISO9000などのマネジメントシステムにおいては一般的ではない。
2、「トレーサビリティ(流通)」
流通において生産者情報等を伝達するための仕組み」について次のように述べる。
トレーサビリティ(英:traceability)は、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。日本語では追跡可能性(ついせきかのうせい)とも言われる。
a、概況
20世紀末頃より、遺伝子組み換え作物の登場や、有機農産物の人気の高まり、食物アレルギーやBSE問題、偽装表示、産地偽装問題などの発生に伴って、食品の安全性や、消費者の選択権に対する関心が高まっており、特に食品分野でのトレーサビリティが注目されている。
日本ではBSE問題から牛肉に、事故米穀問題からコメ・米加工品にトレーサビリティが義務化された。しかし、事故麦問題が起きている麦に対してはまだ義務化されていない。日本では消費者や量販店のメリットが注目を集めている。
EUでは消費者のためではなく、ある商品が作られて消費者に渡る過程において、学校に行くべき児童が労働に従事していないかどうか、生態系を乱すような乱獲や乱伐を引き起こしていないかといった事を確認することがトレーサビリティの大きな目的として考えられている。日本においては、このようなEU型のトレーサビリティの目的はエシカルの概念が近い。
b、システム
トレーサビリティとは、対象とする物品(とその部品や原材料)の流通履歴を確認できることである。
トレーサビリティには、トレースバックと、トレースフォワードがある。前者は物品の流通履歴の時系列にさかのぼって記録をたどる方向で、後者は時間経過に沿っていく方向である。
対象とする物品に対して関心を示した人間(代表例は消費者)が、その物品の履歴をさかのぼって、物品の生産履歴を見ることは、トレーサビリティ(トレースバック)によってもたらされる。対象とする物品に問題が発見された時、その物品が販売された特定顧客に対してピンポイントで商品の回収を行うことは、トレーサビリティ(トレースフォワード)によってもたらされる。トレーサビリティは、対象となる物品を、観測しうる物理量によって定量的に記述された記録によって構築される。物理量とは、時刻、重量、名称、物品に添付意された記号(バーコードなど)等々によって記述される。
物理量の計測結果が一定でなかったり、添付された記号などが故意・過失によって紛失等することは、物流におけるトレーサビリティの避けて通れない点である。したがって、トレーサビリティを構築する人間のモラルが、トレーサビリティの信頼の根源である。
c、観察可能な情報
日本語で単に「トレーサビリティ」という場合には、一般に工業製品や食料品など、市場を流通する様々な商品に関連して、これら物品が遣り取りされ、最終的に販売されるところまでなどを指す傾向が強い。この場合では、農業や漁業といった食品産業における第一次産業や製造業など第二次産業から商業活動など第三次産業までにおけるトレーサビリティに限定されている。また、物理量の記述の蓄積がトレーサビリティの構築の必要要件であるため、無形財を対象としたトレーサビリティは不可能である。
たとえば食品として流通する大根を考えた場合、この大根に関する観測可能な現象は、時間的な範囲では種子の選定から大根の成長、取り入れと出荷、消費もしくは廃棄されるまでであるが、対象範囲の空間は畑から消費した個人やごみ箱(さらには公的焼却炉など)までなる。厳密には、種苗企業やそれ以前の採種段階などの種の流通経路も含まれる。この情報に誰が関心を持つかによっても違ってくるが、情報を提供する手段や経路の選択も必要で、例えば農業協同組合などが統括している場合においては、生産者側であれば問い合わせにデータシートの形で提供することも可能であろうし、流通業者であればオンラインシステムで接続してデータベースの形で利用させ、末端の消費者であればインターネット上のウェブサイトなどより情報提供を行うことが想定できる。
d、リサイクル家電
リサイクルの進展に伴い、家電製品や自動車などのリサイクル資源の処理についてもトレーサビリティが求められており、日本では消費者がリサイクル費用を負担する家電製品(2005年時点ではテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)では、処理について確認することが可能となっている。
e、宅配便
なお、宅配便等のサービスでは、発送元から到着先までが一対一であるため、追跡性が極めて高い。全ての貨物情報がオンライン処理されている現代にあっては、発送側や到着先が、荷物の受付伝票に記載された番号によって、今何処の集荷場を通過しているかを、インターネットの運送業者のウェブサイト上において、リアルタイムで確認する事が可能となっている。特にこれらは通信販売業者等が、商品発送の際に、顧客に伝票番号を通知・顧客側で荷物の到着過程を確認できるといった利用法にも用いられ、宅配便を使った円滑な商取引に活用されている。
f、ICタグ
日本では、完全なトレーサビリティ実現の手段として、ICタグが経済産業省を中心とした官民合同で研究開発段階にある。また食品(特に牛肉・鶏卵等)は、農林水産省がトレーサビリティ普及に向けた活動を行っている。実際の普及までのハードルには、主にコスト面での課題に因る所が大きいが、ICタグを利用したトレーサビリティに関しては、社会的に浸透すれば一つ数円台にまで価格は低下すると見られている。
g、ロット管理との関係
日本では、様々な下請工場を経て生産される工業製品の多くは、古くは管理番号と台帳・近年ではバーコードを印刷したシールを通箱に添付して要所要所でチェックする事で、ロット毎の品質管理を行う様式が発達している。これらは、様々な粗製品や半製品(仕掛品)の品質不良が判明した場合、いち早く該当する部品を使用した製品の所在を明らかにすることが可能で、日本製品の品質向上に大きく貢献しており、世界的にも同様の製造手法が導入されている。
しかし、様々な部品が集約されて一つの製品となる工業製品とは逆に、末端に行くほど細分化されて流通する食料品の場合は、パック詰め状態にまで追跡すると、人的にも設備的にも膨大なコストを発生させる事から、なかなか進まない問題があった。一方では、年々高まる消費者の食品に対する関心により、生産者側から一方的に供給されるスタイルから、消費者が生産者によって購入するかどうかを選ぶスタイルも生まれて来た。特に海外からの輸入食料では、ポストハーベスト農薬等による、食の安全性という問題もあり、食品の流通にまで消費者が関心を寄せる傾向は1980年代より急速に高まっており、更に各種食品問題によってトレーサビリティの重要度は、多方面で認識され始めている。
h、BSE問題とトレーサビリティ
アメリカでは2003年末に発生した乳牛のBSE(狂牛病)問題により、2005年現在でも日本を始めとする各国から牛肉の禁輸措置を受けているが(日本については2005年12月に条件付で禁輸解除→ウィキニュースされたものの、危険部位が除去されていなかったことが発覚し、再び輸入停止)、同国内のトレーサビリティが不完全であった事が、同問題を長引かせる要因として挙げられる。
この問題では、異常プリオン汚染飼料を与えられた事が疑われる牛・80頭がカナダのアルバータ州からアメリカ内に入った後、28頭の行方までは189飼育施設の調査で判明したが、残り52頭は「調査不能」となっており、既に食肉として市場に出回ったり、肉骨粉として再利用された可能性も挙げられている。
1990年代のイギリスBSE問題では、感染の可能性が疑われる牛425万頭が2000年に殺処分され、これら牛の飼育コストの補償や処分コストにより、莫大な損害を発生させているが、それでも酪農製品輸出の完全な禁止状態に比べれば、必ずしも不利益となり得ない背景がある訳だが、トレーサビリティが充実すれば、これらの損害を最小限に抑えられると考えられている。
日本では、2004年12月から、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の施行により、国産牛肉については、牛の出生からと畜場(食肉処理場)で処理されて、牛肉に加工され、小売店頭に並ぶ一連の履歴を10桁の個体識別番号で管理し、取引のデータを記録することになった。
i、EUの動向
(1)TraceFishプロジェクト
BSEの経験より、畜産物だけではなく水産物の安全管理にもトレーサビリティの必要性を求めたEU政府は、「生活の質の向上と管理(Quality of life and management of living resources)」(project number QLK1-2000-00164)研究の一環として水産業の先進国であるノルウェーにTraceFishプロジェクトとして水産物トレーサビリティシステムの立案を委託した。
TraceFishプロジェクトは2000年末から2002年末までの活動成果として水産トレーサビリティに必要な記録項目である「CWA14659漁業の追跡可能性-養殖魚流通チェーンに記録される情報の指定 CWA14660漁業の追跡可能性-捕獲された魚分布に記録される情報の指定」が制定され、電子データの構造としてTraceFishXMLSchemaを策定した。TraceFishプロジェクトの成果はその後、EUのTraceプロジェクト(水産物を除く食品全般)とSEAFOODplus(水産物)に引継がれ、さらにこの2つのプロジェクトの成果を食品全般に対応可能なトレーサビリティに応用するTraceFoodプロジェクトの立ち上げが検討されている。
TraceFoodではトレーサビリティシステムの電子取引情報の規格としてTraceCore XML、トレーサビリティ導入運用のためのガイドラインとしてGTP(Good Traceability Practice)がプロジェクト終了の2009年を目標に検討されており、ユニークな取引コード体系として欧州のEANコード体系とアメリカのUCCコード体系を統一したGS1(Global Standard One)の導入が推奨されている。
(2)法的規制
法律面では「一般食品法への規則(EC)No178/2002」が制定され、2005年1月1日からの試行を経て2007年1月1日から、EU域内25カ国の全ての食品企業は、入荷から出荷までの製造過程の記録を残すこと、「One step Up、One step Down」が義務付けられている。
C、各種の辞書のトレーサビリティの説明
a、デジタル大辞泉 トレーサビリティー【traceability】
「跡をたどることができることの意」。農産物・食品・医薬品・工業製品などの商品やその原材料・部品などを個別に識別し、生産から加工・流通・販売・廃棄までの過程を明確に記録することによって、商品からさかのぼって履歴情報を確認できるようにすること。また、そのシステム。生産履歴管理システム。例えば牛肉トレーサビリティー法。
b、実用日本語表現辞典 トレーサビリティ(別表記トレーサービリティ、英語traceability)(2018年9月27日更新)
トレーサビリティ(英: traceability)とは、商品の生産・流通過程が追跡可能であること、および、生産・流通の履歴を正確に記録・管理するシステムのこと。
英語のtraceabilityは動詞のtrace(跡を辿る)に接尾辞ability(可能である)が付いた形容詞である。日本語では「追跡可能性」という訳語が用いられる場合も少なくないが、単に追跡できるかどうかに留まらず、追跡のための履歴の記録や管理体制までを包括した表現として用いるためにも、英語をそのままカタカナ表記にした「トレーサビリティ」という言い方が用いられることが多い。
「生産履歴」という生産・流通過程の記録を意味する用語もあるが、トレーサビリティはその記録を残す体制をどう構築するか、その記録をどれだけたどれるか、という概念である。
トレーサビリティは、食の安全の観点から、特に食品流通の分野において重視されるようになった。例えば、2003年に、牛海綿状脳症(BSE)や偽装表示の問題を受けて牛トレーサビリティ法が制定・施行され、牛肉の生産加工・流通履歴の管理が義務化されている。各事業者が食品を取り扱った記録を作成・保存しておくことにより、食中毒などの健康被害が生じた際に、問題を含む食品がどこから来たのかを調べたり(遡及=トレースバック)、どこに行ったか(追跡=トレースフォワード)を調べたりすることができる。
工業製品の生産・流通、家電製品等のリサイクル過程においても、トレーサビリティが求められるようになっている。
使用例
(1)「一つ一つ番号で管理される宅配便は、トレーサビリティが高い」。
(2)「完璧なトレーサビリティの構築には、関わる企業・個人のモラルが欠かせない」。
c、新語時事用語辞典 トレーサビリティ(英語:traceability)(2020年7月13日更新)
トレーサビリティは「(食品の)移動を把握できること」を意味する英語由来の表現。「追跡可能(性)」と訳されることも多い。もっぱら、食品等の流通・品質管理の分野において、商品の生産過程や流通過程が流通・製造・原料の飼育や栽培に至るまで遡って追跡できること、および、そのためのシステムを指す意味で用いられる用語。
トレーサビリティは、かつて食品の産地偽装や異物混入といった問題が多発し、社会問題化していた際に、その必要性が認識され、導入・整備が進んだ経緯がある。
トレーサビリティ(のシステム)により追跡可能な一連の行程、および、その各段階における仕様を、方眼紙様の表にまとめた体系図が、トレーサビリティマトリクスと呼ばれる。
トレーサビリティマトリクスは、商品の製造工程はもちろん、包装の材料やラベルの印刷工程、印刷用のインク等、あらゆる工程を記入対象とする。そのように厳密に把握・管理することにより、あらゆる段階で発生しうる問題の追跡や管理にも役立ち、仕様変更も行いやすくなる。
食品トレーサビリティでは、原料の入手経路、農産品の栽培基準、農薬の使用基準と実際に使用した実績、種苗の入手経路や栽培土壌なども体系図に組み込まれ管理される。畜産物なら飼育基準や加工基準が、海産物なら漁獲地や、養殖に使われる薬剤が、トレーサビリティシステムマトリクスに含まれることになる。
d、精選版 日本国語大辞典 トレーサビリティ
名詞。英語 traceability。
trace(追跡)とability (できること)を組み合わせた語。
食品がいつ、どこで作られ、どのような経路で食卓に上ったかという生産・流通履歴を明らかにする制度。食品の栽培や生産、加工や処理、輸送と販売などの各段階で正確な記録を残し、安全性について問題が生じた場合の原因究明や食品の回収を容易にする。また、品質・表示に対する消費者の信頼確保にも寄与する。
e、日本大百科全書(ニッポニカ) トレーサビリティ(traceability)
(1)一般の定義は、考慮の対象となっているものの履歴または所在を追跡できることであるが、食品では、生産、処理・加工、流通・販売等の食品供給行程(フードチェーン)の各段階における食品とともに食品に関する情報を追跡し、遡及(そきゅう)できること、と定義できる。具体的には、トレーサビリティシステムは、食品供給行程の各段階で、仕入先、販売先などの記録を取り、記録情報を保管し、識別番号等を用いて食品との結び付きを確保することによって、食品とその流通した経路および所在等を記録した情報の追跡と遡及を可能とする仕組みである。しかし、あくまで食品の追跡、遡及のための仕組みであり、製造工程での衛生管理を直接的に行うものではない。
トレーサビリティシステムを導入することにより得られる利点は、以下の通りである。
(a)食品の安全性に関して予期せぬ問題が生じた際に、その原因究明や、問題食品の回収等を迅速・容易に行うことが可能となる。
(b)食品の安全性や品質等に関する消費者等への情報提供に資するとともに、表示内容の確認が容易になることを通じて表示の信頼を確保できる。
(c)生産者や食品事業者の行う製品管理、品質管理等の向上や効率化に資することができる。
(2)日本ではこのシステムは牛肉分野で初めて導入された。
2001年(平成13年)に、国内初の牛海綿状脳症(BSE)が発生し、それを契機に牛肉のトレーサビリティの確立が求められた。その後、食肉流通業者や食品スーパーでの食肉の表示違反が社会問題となり、食肉業界では消費者の食肉に対する信頼回復が緊急の課題となった。
2002年には、国内で飼養されている牛に個体識別番号が記載された耳標(じひょう)の取付け作業が終わり、農林水産省による「牛個体識別台帳」が作成された。そして2002年10月からはインターネットによってその情報を閲覧できる体制が整えられた。2003年6月には「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛肉トレーサビリティ法)」(平成15年法律第72号)が成立し、関係政省令などが制定されて、2003年12月より同法が生産段階で施行され、2004年12月からは、と畜以降の牛肉流通段階でも施行された。
国内で生まれたすべての牛と輸入牛に、10桁(けた)の個体識別番号が印字された耳標が装着され、この個体識別番号によって、その牛の性別や種別(黒毛(くろげ)和種など)に加え、出生から、肥育を経て、と畜・解体処理場までの資料が、データベースに記録される。その牛が牛肉となってからは、枝肉、部分肉、精肉と加工され流通していく過程で、その取引に関わる販売業者などにより、個体識別番号が表示され、仕入れの相手先などが帳簿に記録・保存される。これにより、牛肉については、牛の出生から消費者に供給されるまでの間の追跡・遡及、すなわち生産流通履歴情報の把握が可能となっている。消費者は、購入した牛肉に表示されている個体識別番号により、インターネットを通じて牛の生産履歴を調べることができるようになっている。
2011年3月の東日本大震災の際に発生した福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が大量に放出され、土壌や農産物等が広範囲に汚染された。2011年7月に、国産の稲藁(わら)を給与された肥育牛の肉から国の暫定規制値を超える放射性セシウムを検出、国産の牛肉が消費者から敬遠され、消費が減退する事態となった。その後、独立行政法人家畜改良センターや厚生労働省で、インターネット上で放射性物質検査状況等を調べられるシステムを運用させ、国産牛肉の安全性の強化を図った。
f、改訂新版 世界大百科事典 トレーサビリティ(traceability)
さまざまな量の測定に用いられる計測器は、それぞれの量の単位の基準をもとにして目盛が定められていなければならない。そのために量ごとに単位の国家標準が定められており、さらにその値を一般の計測器に伝えるための精度の高い標準器が何段階か用意され,計測器の目盛定めや校正に用いられている。
このように一般の計測器が精度的により高位にある標準器、あるいは計測器によって次々と校正され、単位の国家標準とつながる経路が確立されていることをトレーサビリティという。
トレーサビリティが確立されていれば標準器、または計測器の表す値は国家標準を写しとったものとなり、精度、とくに正確さが保証されているとみなすことができる。
g、ASCII.jpデジタル用語辞典 トレーサビリティ
主に品質マネージメントシステムにおいて使用される定義。ISO9000:2000においては「考慮の対象となっているものの履歴、適用又は所在を適用できること」と定義されており、具体的には「処理の履歴」「材料及び部品の源」などが挙げられている。
トレーサビリティ自体は業界を問わないが、特に食品業界では、狂牛病や鳥インフルエンザなどの騒動もあって、安全性を徹底するため、生産者や生産地のほか、輸送の過程、加工の工程を明記するなど、安心かつ安全な商品の流通に努めている。
h、世界大百科事典(旧版)内のトレーサビリティの言及 温度計と電気計測
(1)温度測定のトレーサビリティ(traceability)
長さ、質量のような量のトレーサビリティを確保する際には、標準の量の2倍、3倍という考え方を援用することもできるが、温度については、この考え方だけでは処理できない面があり、高温にせよ低温にせよ、問題とする温度を現実に作り出したうえで、標準の温度計との比較を行って正確さを判定しなければならないのがふつうである。
そこで温度の範囲をいくつかに区分し、それぞれについての標準温度計や比較校正用の装置が考案されている。
(2)電気計測のトレーサビリティ(traceability)
通常、国家標準を基とし、校正を通じて現場の計測器までつながっていることが必要である。このことをトレーサビリティの確保という。
測定データの処理
測定結果の表示には最確値として平均値、偶然誤差として平均値の標準偏差の推定値をとる。