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2024年ノーベル物理学賞とその業績
20243年のノーベル物理学賞は1980年代に人工知能(AI)の根幹である人工ニューラルネットワークの基礎を築いた
アメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の二人に与えられた

2024 Nobel Prize in Physics
2024年ノーベル物理学賞は人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明
(ジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏)


(計量計測データバンク編集部)

2024年ノーベル物理学賞は人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明(ジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏)

2024年ノーベル物理学賞は人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明(ジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏)


写真左はJohn J. Hopfield(ホップフィールド)氏、右はGeoffrey E. Hinton(ヒントン)氏。2024年のノーベル物理学賞の受賞者(出所:スウェーデン王立科学アカデミー)


ホップフィールド氏の1985年の研究内容のイメージ.。曖昧もことした入力のJが情報処理されてJとして出力される。(出所:スウェーデン王立科学アカデミー)

(タイトル)
2024年ノーベル物理学賞は人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明(ジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏)

(本文)

 スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、2024年10月8日午後7時前(日本時間)、2024年のノーベル物理学賞の受賞者にアメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の二人を選んだことを発表した。

 ホップフィールド教授は人間の神経回路を模倣した「人工ニューラルネットワーク」を使って、物理学の理論から画像やパターンなどのデータを保存し、再構成できる「連想記憶」と呼ばれる手法を開発した。この手法によって不完全なデータから元のデータを再現できるようになった。

 ヒントン教授はこの手法を統計物理学の理論などを使って発展させ、学習した画像などの大量のデータをもとに可能性の高さから未知のデータを導き出すアルゴリズムを開発した。

 二人が開発した手法などは、AI(人工知能の技術の中核を担う「機械学習」)の基礎となり、その後「ディープ・ラーニング」など新たなモデルの確立につながった。

 ノーベル賞の選考委員会は二人の功績について「1980年代以降、『人工ニューラルネットワーク』の研究開発において、重要な業績を積み重ねていて、すでに多くの恩恵をもたらしている。物理学の分野では、特定の性質を備えた新たな物質の開発など極めて幅広い分野で『人工ニューラルネットワーク』が使われている」と評価した。

 ノーベル賞物理学賞を受賞した二人がは1980年代に人工知能(AI)の根幹である人工ニューラルネットワークの基礎を築いた。

 磁性の振る舞いを語るのに使われている物理学のモデルから発想を得た。磁性体は互いに影響を及ぼし合う電子のスピンが縦横に並んだモデルで記述される。各スピンは互いの距離と相互作用を測りながら全体のエネルギーが最も小さくなる方向を向く。

 理論物理者のホップフィールドは1982年に、このスピンの向きを白と黒で表し、その配列のパターンをスピン同士の相互作用の強さによって記録する「ホップフィールド・ネットワーク」を考案した。数学的な操作によって、複数のパターンを一度にモデルに記憶させることができる。

 記憶したパターンが部分的には入っているもののノイズだらけで全体がわからないパターンがあっても、これをホップフィールド・ネットワークに入力して全体のエネルギーを下げていく数学的な操作をすると、スピンが徐々に回転し先に記憶させたパターンのうち一番近いものに収まっていく。

 ホップフィールド・ネットワークによって、断片的な記憶から全体を再現する「連想記憶」をコンピュータで実現することができる。連想記憶とは例えば人の名前を思い出すとき「えーと、よこ、よこい、……よこや……あ、よしもとさん」などと記憶を呼び起こす方法。ホップフィールド・ネットワークは、連想記憶だけでなく複数の都市を巡る最短ルートを求める「セールスマン巡回問題」などさまざまな組み合わせのうち最適な方法を選び取る最適化問題に応用できることがわかった。

 ヒントンは、記憶したパターンを想起するだけでなく、大量のパターンからその特徴を学習するという新たな情報処理を実現させた。ヒントンは1985年に「ボルツマン・マシン」モデルを開発した。使った物理モデルはスピン系である。

 ボルツマンは19世紀の物理学者で、系があるエネルギーにあるとき、スピンがどんな確率でどの方向を向くかを示す「ボルツマン分布」を考案した。ヒントンのボルツマン・マシンは、入力した多数のパターンを学習し、スピンの向きの持っている傾向を学びとる。それによって学習していないパターンでも生成できる。現在の生成AIの原型となった。

 2000年代に入るとボルツマン・マシンは次第に多層化された。最初の層で学習したことを次の層に受け渡してさらに学習する。多層のボルツマン・マシンは、新たに未知のパターンを入力すると学習したパターンのどれに近いかを高い精度で判断する。ヒントンはこの仕組みを「深層学習」と名付けた。これをきっかけに人工知能の開発が大きく進展する。

 ホップフィールド・ネットワークは、記憶できる情報量が少なかったため実用的な応用は広がらなかった。近年になって記憶できる情報量を格段に増やしたモダン・ホップフィールド・ネットワークが登場したことで利用可能性が高まった。特にChatGPTなどに使われる深層学習のモデルであるトランスフォーマーと似た性能を備えていることがわかた。

 現在のAIは、ホップフィールドやヒントンが作ったマシンとは比較にならないほど巨大化し、はるかに複雑なタスクを実行している。だが基礎科学としての土台は1980年代に築かれた。応用を目指すエンジニアリングが発展したことにより、現在の姿がある。

 2024年のノーベル物理学賞は物理学というよりもその応用技術分野から選考している。実用面からの価値評価がなされたためと言えよう。電卓と計算用のコンピュータが普及しても人の計算能力を捨ててしまうことはよいことではない。ソロバンの暗算の力があれば便利だことは多い。何故そうなるのかの感覚を失った人には危うさがつきまとう。なお日本人のノーベル賞受賞者が受賞後に公式にメッセージをすることが多いのが、基礎科学分野での研究費が不足していること、処遇するための経費不足によって人材が育成できないこと、などである。ノーベル賞の受賞は基礎科学分野では30年前の研究成果が下になっていることが多い。成果主義で研究者を追いまわしている弊害を訴える言葉として聞くくべきである。

 日本物理学会はノーベル物理学賞の発表のタイミングで、日本物理学会誌に掲載されたと日本における関連の研究論文とその執筆者を公表した。以下がその論文と執筆者。

甘利 俊一「発展する脳の数理モデル」
1988年43巻12号 pp. 914-920


西森 秀稔 「ニューラルネットワーク」
1994年49巻1号 pp.2-9


樺島 祥介「コトの物理学 : 誤り訂正符号を例として」
2003年58 巻4 号 pp. 239-246


瀧 雅人, 田中 章詞
「物理屋のための深層学習」(シリーズ「人工知能と物理学」)
2019 年74巻11号 pp. 759-764

野村 悠祐, 山地 洋平, 今田 正俊
「機械学習を用いて量子多体系を表現する」(シリーズ「人工知能と物理学」)
2019年74巻2号 pp. 72-81

吉野 元
「深層ニューラルネットワークの解剖


統計力学によるアプローチ」
2021年 76 巻 9 号 pp. 589-594


2024-10-09-2024-nobel-prize-in-physics-

[資料]
2024年ノーベル物理学賞は人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明(ジョン・ホップフィールド氏とカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン氏)
ホップフィールド・ネットワーク - Wikipedia
 ホップフィールド・ネットワーク (英: Hopfield network) は、ニューラルネットワークの一モデルである。
 アメリカ合衆国の物理学者であるジョン・ホップフィールド (J.J. Hopfield) が提唱した。ユニット(ニューロン)間に対称的な相互作用がある非同期型ネットワークであり、自然な操作によってネットワークのエネルギーが極小値をとる。元はスピンの安定条件をもとめるモデルとして発想されたものであったが、ネットワークによる連想記憶のモデルとして歓迎され、ニューラルネットブームの火付け役の一つとなり、また後のボルツマンマシンの元ともなった。これは統計的な変動をもちいて、エネルギーが極小値ではなく最小値をとることを目指すモデルである。
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計量計測データバンク ニュースの窓-250-2024年ノーベル物理学賞 人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明(ジョン・ホップフィールドとカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン)

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(日本の計量器産業の生産高は1兆円)(広義の計量器企業の売上高は3兆円と推計できる)(計量器生産高はGDP対比0.2%あるいは0.6%)(新しい計測方法ができることがはてしなく続く)(計測センサーは神経系の各部の神経と同じ働きをする)(人の神経組織は数千あるいは数万以上、これに未来の計測器をかさねる)(人の脳の質量は成人で体重の2%だが脳の働きは質量と連動しない)(神経の質量は脳の質量の1000分の1ほどか)(経済と社会を対象に痛い痒いを知るのが計測器だ)(取引の公正を実現する計測器)

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カメラの撮影枚数にみる技術開発とリチウムイオン電池

地が裂け山が崩れ洪水が人を襲う日本の自然(ハザードマップは人が住んではならない場所を示す地図だ

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子供は無心で身体を動かす労働は楽しいことだった

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地震予知も都市改造もできないから地震がきたら自分で身を守れ

計量行政は適正な計量の確保にあり利益は国民が享受する

人口が減り高齢化が進む国はどのようになるか

地震計は地震を予知する機能を持たない

旧来の販売方法の不合理性がネットオークションを成立させた

計量法の検定制度は主権者たる国民のためにある

パソコンは使えないしインターネットは知らない(役所は知らせることをしない奇妙な組織である)

部分を測っただけで全体を推論した結果の地球温暖化論

計測値で語られる諸因果の受け止め方

嘘をつく人、怒鳴る人、嫌なことをユーモアで包む人

球速表示160kmは確かか(球速表示160kmは信ずるに値するものなのか)

用途としての放射能と放射線の単位があり震災復旧では物を見る目になる

計測には二つの性質がある (計測には純粋科学と人の欲望の調和という二つの性質がある)

社会と購買者への信用ある通信としての広告

計量法は人の欲望のぶつかり合いを仲介し調整する

トレーサビリティに関するドイツの小話にみる教訓 「コンパティブルだがトレーサビリィ不足だった質量測定の一例」

内需依存型産業社会日本と人口減少社会の在り方

控えめな計量法が適用されて実現する平和な社会 (サブタイトル)キログラムの単位記号はkgでありKGではない。メートルの単位記号はmでありMではない。

計量の教養こそ身に付けるべき課題だ

0.1%の計量器の検定・検査が世のなかに適正計量を実現をもたらす

見えないモノを見えるようにする計測技術

すべては丈夫な身体と丈夫な心あってこそ

消費は人口減少の度合いで減りGDPも同様に推移する

強い欲求をもっているとニーズは自ずと分かるものらしい

キログラムは新定義を満足させたうえ50 µgから10 µgに精度向上

質量と重量の違い及び質量の単位キログラムの定義変更

規則に照らせば不正でも総合性能としては問題ない事柄

バベルの塔とノアの箱舟の伝説と旧カヤバ工業の免震性能偽装

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自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす

2018年11月16日開催の国際度量衡総会で質量の単位キログラム(kg)を定義変更

事実は小説よりも奇なり 二つの事件

計測システムがわかることが計測における教養だ

世の中は計測でできている

計測の目的と精密さの実現の整合

計量法は人の欲望のぶつかり合いを仲介し調整する

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すべては丈夫な身体と丈夫な心あってこそ

消費は人口減少の度合いで減りGDPも同様に推移する

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強い欲求をもっているとニーズは自ずと分かるものらしい

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2018年11月16日開催の国際度量衡総会で質量の単位キログラム(kg)を定義変更

日本人の頭骨の変化を計測値が示す副題(鎌倉時代の日本人の頭は前後に長い形をしていた)

優良事業所が適正計量管理事業所の指定を受ける社会的責任

計測の目的と求められる確かを考える

地方計量行政の模範県を躊躇なく真似たい

自動ハカリの指定検定機関制度と行政組織の関わり方

1%の検定で計量の安全を実現している日本の計量制度

自動ハカリの指定定期検査機関の動向を観察する

計測の在り方と計測値の表示をめぐる諸事情

計量協会webサイトから日本の計量行政の未来が見える

光波干渉測定システムはアインシュタインの理論を事実として確認した

収賄で終身刑になる中国要人と首相をかばい罪に問われる日本の官僚

ウィキペディアによる計量の世界の説明は1割ほど

時代の波と計量器産業の浮き沈み

世界でも範たる状態を築いている日本の計量行政

中国では日本以上の人口減少状態が出現している

ハカリの定期検査実施漏れは計量憲法である計量法違反だ

城下町の鍛冶屋が日本の産業の元になった

山口高志投手の球がベース通過時点で一番速かった

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計れと人を管理したQC運動に対比される品質工学

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計量法の実質の内容を変える政省令の理解と解釈

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学校は記憶容量とアプリケーションを確認するところ

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社会の計量の安全の確保は住民サービスの基礎

神鋼素材は計測器性能に影響がない

田中舘愛橘の志賀潔と中村清二への教え方



計量計測のエッセー
「日本計量新報」今週の話題と重要ニュース(速報版)
計量計測トレーサビリティのデータベース(サブタイトル 日本の計量計測とトレーサビリティ)
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