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「年縞博物館」への道 中村邦光 (計量計測データバンクweb版)
Nenko hakubutsukan by Eijyu Matumoto

「年縞博物館」への道 日本計量史学会 松本榮壽 (計量計測データバンクweb版)
本稿は日本計量新報に連載された文章をweb版である計量計測データバンクで取り扱ったものです

「年縞博物館」への道 日本計量史学会 松本榮壽

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「年縞博物館」への道 日本計量史学会 松本榮壽

 【福井県年縞博物館(ふくいけんねんこうはくぶつかん)は、福井県三方上中郡若狭町にある地誌学および考古学の博物館。三方五湖の一つである水月湖の湖底で発見された7万年に及ぶ年縞に関する展示・研究を行っている。特別館長には山根一眞が就任した。】

図1:年縞博物館全景


2:博物館2階の水月湖ギャラリーにならぶ7万年の年縞


図3:1万年前の見事なシマシマ


 10月18日の「計量史さぐる会2019」の翌日、福井県「年縞博物館」を訪れた。「さぐる会」の特別講演『福井県年縞博物館と年縞―年縞博物館の紹介』(年縞博物館・学芸員)長屋憲慶氏のお話に興味を覚えたからである。

 (1)年縞博物館は2018年9月15日にオープンしたばかりだが、2019年10月末には7万人の入場者を数えている。筆者も当日は中学生の団体に出会った。学生たちの興味対象としてまた学習には最適な博物館と推定した。計量史研究をめざす研究者の一人としては、現代からホモサピエンスの登場7万年にさかのぼる湖底の年縞の実物は胸を打たれる場である。

 事前にネットで調べたことには、ここは福井県の名勝「三方五湖」の一つ「水月湖」、湖底には、世界でも唯一7万年分もの縞模様の地層「年縞」が堆積している、博物館には45mの実物展示のほか、カフェも併設しており、訪問者は湖を眺めながらゆったりとした時間を過ごすことができるとあった。

 (2)筆者は大津駅を午前9時、京都から湖西線経由、敦賀でロ-カル小浜線にのりかえ、12時すぎには三方駅到着。 駅前でタクシーを呼び、ほどなく年縞博物館についた。まず全景が興味を引く。45メートルの長い年縞を連想する建築である。(図1)

 入口を進み二階へ上がると水月湖ギャラリー、長い年縞の展示の目を奪われる。全体と1万前年の「しましま」を示す(図2、図3)。水月湖の調査は日本文化センター・安田喜憲名誉教授をリーダーとした[1991年試掘]により年縞堆積物の存在が確認され、 [1993年には約75m]の堆積物を採取、その年縞から5万年前まで、花粉化石を元に縄文時代開始の古気候の変動の研究が可能になった。

 ついで現立命館大学古気象学研究センター長中川毅氏によって[2006年第二次調査、4本のボーリング]が行われ、73mに及ぶ完全な堆積物を採取した。その標本の縞を何年にもわたって数え、縞の中の葉化石の放射線炭素年代を測定できた。研究成果は「2012年米国サイエンス誌に掲載」され、2013年には水月湖の年縞が5万年前までの「世界標準のものさし」InCal13に認定された。「しましま」を数えるなんて簡単だから始まった、20年をこす研究者の粘り強い努力には感銘を覚える。

 2018年9月には「福井県年縞博物館」の開館となったが、年縞の調査研究はその後も「第3次、第4次」と続けられている。百聞は一見に如かず、計量史を研究する皆さんの一見をお勧めする。

 最後に二冊の書籍が刊行されていることを報告する。
▽中川毅『人類と気候の10万年―過去に何が起きたか、これから何が起こるか―』(講談社ブルーバックス、2017)
▽中川毅『時を刻む湖―7万枚の地層に挑んだ科学者たち―』(岩波科学ライブラリー、 2015)

2020-06-11-5-nenko-museum-by-eijyu-matumoto-

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