幼少時の経験 日本大学 矢野耕也 (計量計測データバンクweb版)
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幼少時の経験 日本大学 矢野耕也
子供の興味などはどこでどう変わるかわからない。幼い時の神童が、年を経てくたびれた中年となっている話はよく聞くが、幼児期の、特に男の子は動くものに惹かれることが多いのではないだろうか。
球技という身体系は置くとして、例えば車、飛行機、鉄道、船とか、生き物や植物というケースが王道であろう。金魚や犬猫は飼育という手段の個人所有が可能であるが、交通系はおもちゃ以外に所有が出来ず、現物を見るしかない。
自分のことで恐縮であるが、おもちゃや模型では我慢が出来ずに、ある時から実物を見たいといい出して親をたいそう困らせた。小学生にありがちなわがままであるが、どこかで森林鉄道なる、童話に出てくるようなものを見つけた。そんな話を親が信じるわけもないが、ならば証拠をと、これもどうやって見つけたのか忘れたが、旅行雑誌の切り抜きか何かを見せ、さらに1973年1月放映の「新日本紀行」というNHKの番組で取り上げられたことから親も渋々折れ、翌年の夏に観に行くことになった。その夏といわずに翌年というところが親の戦略だったのだろうが、鬼も笑う来年の話に夢中になっていた。
翌夏に浮かぬ顔でついてきた親と共に現物を見て驚いたのが、スケールの小ささであった。JRの線路幅は1067mm、すなわち3フィート6インチ(3(ft)6(in))であるが、1(ft)も狭い2(ft)6(in)の762mmで、標準軌といわれる新幹線の4(ft)8.5(in)の1435mmの半分くらいしかないが、いずれもメートル法に準拠していない。この幅も私設鉄道条例(1887年、現在は廃止)周辺のれっきとした法律に基づいていると知ったのは後のことであるが、同時期にメートル条約に加盟してはいるものの、敷設目的の規格という側面が強いからか、インチ基準で成立している。因みに1000mm幅には、タイとミャンマーを結んでいた泰緬(たいめん)鉄道という太平洋戦争時の例があるが、メートル法に準拠した線路幅はあまり聞かない。
ところで、その森林鉄道で初めて目にした保線用の小さな移動車にタコグラフ装着とあったが、子供にはそれが何であるかさっぱりわからないまま、翌年の遠足のバスの後部に同様のシールが貼られていたのに気付き、タコなる語感の奇特さも相まってその謎は深まるばかりであったが、要は運行記録計である。
その後年月を経て就職後の現場で、似たような原理の経時記録計の保守を担当した。1週間単位でチャート紙にインクで動作の記録をする仕組みだが、補充忘れで紙切れを起こしたり、スプロケットで巻き取る記録用紙が外れて、紙が進まずにインクが全部1点で消耗をしていたり、印字記録を屏風のように畳んでの整理というように、使い方も悪いとはいえ、おおよそ現代のデジタル方式では信じられない素朴さがあった。
最近は多くがデジタル化され、タクシーはおろか個人用のドライブレコーダーさえ標準装備になりつつある現代、思わぬところで計測器の進化はあったものだと、遠い記憶を辿った次第である。
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