野鳥歳時記　夏

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標高1,600にある私の小さな山荘　八ヶ岳の丸太小屋のこと
My little mountain cabin at an altitude of 1,600m
標高1,600にある私の小さな山荘　八ヶ岳の丸太小屋のこと
甲斐鐵太郎

標高1,600にある私の小さな山荘　八ヶ岳の丸太小屋のこと
甲斐鐵太郎

標高1,600にある私の小さな山荘　八ヶ岳の丸太小屋のこと　甲斐鐵太郎

９月28日　高原はもう秋　ヤマボウシが色づいてナラの木ではドングリが実を結んでいる。

（タイトル）

標高1,600にある私の小さな山荘　八ヶ岳の丸太小屋のこと　甲斐鐵太郎

（本文）

　標高1,600ｍの山荘暮らしをしている。ときどき東京の下町にある住まいに出かける。太い丸太で造られた山荘が本宅になっているのが今の暮らしだ。山荘は大まかには八ヶ岳山麓、詳しくは別の言い方があるがこれは省く。山荘の隣の敷地では東京の人の建築が進んでいる。平屋の大きな山荘で敷地は1,000坪ほど。平坦地で東西南北に景色が開けた良い土地である。自分の庭があって上下、左右の隣室に気兼ねない山荘暮らしがしたいのだろう。

　私の山荘は東と南がなだらかな斜面になっていてこれが寺院建築における敷地の取り方となっている。朝日が昇る東の斜面は箱庭のそれ。南からは陽が入り、夕日が西に沈む景色は春夏秋冬すべてにおいて最高である。南側の二階には小さなバルコニーある。夏の日差し除けになっているヤマボウシが白い花をつける季節はこの山荘が一番輝く時だ。

　東京の下町にもある住まいのマンションはときとき使う程度。八ヶ岳の山荘での暮らしが続いている。二階とはいってもロフトのような部屋が一つ、一階はワンルーム形式になっている。ここにシングルベッドが二つ、食卓が一つ、食卓の端を机代わりにしてパソコンを設置、風呂と洗面所と便所とキッチンが独立している。二階にはセミダブルベッドを左右に配して、中央に多くな机と椅子、そして藤の椅子が三席。このようなことで豪華ではない小さな山荘である。35年前に東京から逃げるため親の支援で建てた山荘は、年輪を数えると樹齢70年か100年の欧州赤松の丸太を横積みにしており、これに急傾斜の屋根を架けている。急傾斜の屋根は落ち葉を貯めないことが取り柄。一階建て構造に急傾斜の屋根を付けると二階部分が一部屋確保できる。この部屋をロフトという。

　八島湿原の湖面の標高は1,630ｍ。標高1,600mの亜高山帯にあるこの山荘とほぼ同じ標高。この山荘の気候は八島湿原に似る。湿原の高台で冬季営業している山小屋がある。このような山小屋に住んでいる感覚が丸木小屋の山荘である。この山荘は蓼科高原の大きな規模の別荘地にあって、冬季の積雪時には道は除雪され、国道299号線のメルヘン街道にも近い。除雪されない道路に面している山荘の冬季の宿泊には困難が伴う。山荘の東側と北側道路は積雪時に真っ先に除雪される。国道の除雪はこれよりも早くい。積雪時の除雪は山荘暮らしと切り離せない。田渕義雄さんが金峰山麓の長野県川上村川端下での暮らしを綴る文章には、住まいへの引き込み道路が雪で埋もれるために郵便は道端に置いてある車で受けているとあった。

　道の遥か上にある山荘、遥か下にある山荘は冬季の積雪時に使い勝手が劣る。景色を求めて斜面に建てる山荘計画の盲点になりがちである。

　2023年12月最低気温はマイナス11℃。冬季の最低気温はマイナス15℃を記録する。日中でも氷点下の状態がつづく。５mmほどの積雪があり２週間ほどで自然蒸発した。庭の隈笹（クマザサ）の茂みにわずかに雪が残る。通年だと40㎝ほどが根雪になっている。この地のこの庭のクマザサは背丈が低く、葉はまばらである。楚々と生えるクマザサが庭の景色をつくりだす。冬季は積雪で覆われるので一年の半分の期間に出現する。

　薪ストーブは設置していない。山荘の空間が小さいので薪ストーブの出力が余るためだ。ガス温風ヒーターを使っていた。壊れた後は石油暖房機が主体。エアコンを一階と地下室に設置している。冬季の外出中にエアコン暖房を掛けて室温の低下を抑える。１週間ほど山荘を空けるときにはエアコンを入れたままにする。外出時の室温は15℃。二階はこれより３℃ほど高い。

　太い赤松の丸太の横組みの家の保温性は良いようだ。窓は二重の硝子。断熱性を高めるためにポリカーボの透明板を重ねている。折を見て四重にする考えでいる。風呂場と便所の窓は四重にしている。

　断熱性ということでは70年から100年の樹齢の欧州赤松は期待に応えている。建築当時は丸太の隙間を塞ぐことや乾燥によって隙間ができることに思考が回らなかった。築35年を経過すると隙間から冷風が流れ込む。３月の風の強い日には隙間から35年前の木屑が吹き出した。隙間を紙テープで塞いでいる。風呂場と便所では十分に効果があった。

　丸木小屋は斜面の傾斜に対応して否応なく土台を高くした。これにより土台部分の半分を地下室にすることができた。残りは水道とガスの供給のための通路。地下室は地面からの断熱に大きく機能している。通風孔を塞ぎ、時々エアコンを掛ける。除湿と暖房のためである。地下室と太い丸木の積み上げによって冬季対応の山荘となった。夏仕様、つまり夏の滞在用として造られるのが普通であった35年前の八ヶ岳山麓の山荘である。この状況下で冬仕様が確保されたのは幸いであった。

　木組みのデッキは家の半分ほどの面積を持つ。小さな家だから少しのデッキでも家の半分の面積になる。定期的な塗装のために春から準備していた。そのデッキを子細にみると補修の必要な部分があった。これの手当てに時間を割かれた。軒から食み出しているデッキ側の丸木に腐食がある。工務店に依頼して抜本的な処置をした。冬の晴れ間、そして気温が０℃を超えた日に茶色のキシラデコールで上塗りをした。

　ウッドデッキは北側に造ってあり、その先には十本ほどのシラビソが大木になった。この木が低い間はその先に蓼科山（標高2,531 ｍ）が見えていた。赤松が二本、楢の木が十本、30ｍになってしまったカラマツの大木が取り巻く。冬に緑を残すシラビソがこの山荘に趣を添える。東側に樹高15ｍが二本生えている。楢（ナラ）の木とカラマツの木の葉が落ちた緑のない林は閑散としている。シラビソの葉の緑が冬季の景色を豊かにする。かといってシラビソや樅（モミ）の林に建つ家は冬季に日光が遮られるために暗い。この山荘のシラビソは北側に生えているのでこれがない。

　日本の亜高山帯針葉樹林の標高は、西日本から中部地方で1,500ｍから2,500ｍ。モミ属のシラビソとオオシラビソ、トウヒ属のトウヒほかと、コメツガ、カラマツが中心。1,600ｍ付近はカラマツと楢（ナラ）が主である。シラカバは何本か生えている。

（2023年12月28日執筆、2024年03月22日一部修正）

2023-12-28-my-little-mountain-cabin-at-an-altitude-of-1600m-

旅のエッセー集 essay and journey(essay of journey)　旅行家甲斐鐵太郎
essay and journey(essay of journey)　by kai tetutaro

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