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IoTと測定の不確かさ 中野廣幸(計量士) (計量計測データバンクweb版)
IoT and measurement uncertainty by Hiroyuki Nakano

IoTと測定の不確かさ 中野廣幸(計量士)
 (計量計測データバンクweb版)
本稿は日本計量新報に連載された文章をweb版である計量計測データバンクで取り扱ったものです

IoTと測定の不確かさ 中野廣幸(計量士)

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IoTと測定の不確かさ 中野廣幸(計量士)

 2020年春には、5G、第五世代移動通信システムが導入されます。これにより高速大容量、低遅延、多接続可能なネットワークシステムが実現され、従来インターネットに接続されていなかったモノ(センサー機器、アクチュエーター、建物、車、電子機器など)が、ネットワークを通じて接続されるIoT技術が進歩して、ますます生活が便利になるといわれています。

 従来、主に物販、流通に限られて、「だれが、どこで何を買ったか」というデータのみしか扱えなかったものが、この5G、第五世代移動通信システムにより、より多くのデータが高速でコンピュータ処理ができるようになります。それらデータの中には、IoTを実現する上で、必要となる物に付随するさまざまな諸元、たとえば“重量、力、長さ、時間、速度、加速度、粘度、圧力、電流、電圧、周波数、磁力、光、エネルギー等”が含まれます。

 ただ、やっかいなのはこれらの物理量を情報・データとして扱う際に、それら物理量データの中に、測定の不確かさが付いてくるということです。これらの測定の不確かさを、十分小さくしないと、処理データの妥当性や信頼性が確保できず、IoTを実現することができません。

 処理データの不確かさを許容範囲以下とするためには、残念ながらAI技術をはじめとする情報技術は役に立ちません。なぜなら、いかに進んだ情報処理技術も、もとになる情報自体が正確であることが前提で処理されるものであり、ファジーな情報からはファジーなアウトプットしか得ることができないからです。ファジーなアウトプットを、実際にIoTに採用した場合、最悪、人に危害を与えるものとなります。正しいアウトプットのためには、正しいインプットが必要です。実際にインプットするデータに偏見があったために、ビックデータによる解析の結果に、女性蔑視、人種差別が反映された例も、昨年発生しています。

 IoTにおいて、コンピュータが出す指示と、実際のものの動きとの間には、測定の不確かさの分だけのズレが発生し、不確かさがリスクとなって現れます。このズレを十分小さくすることが、計測技術者の仕事です。現在のところ、コンピュータ通信技術には大きな関心が払われていますが、データ自体が持つ測定の不確かさの影響については、あまり大きな注意払われておらず、正確な情報・データを得るための努力が評価されていません。

 IoT技術の実現には、データの高速大量通信技術と、データそのものを正確に(不確かさを小さく)取得する測定技術の二つが不可欠です。今後5G、第五世代移動通信システムの導入にともない、テータ・情報に求められるものは、量もさることながら質の時代になるでしょう。いかに計測技術者が質の良い(不確かさの小さい)情報を提供できるかがIoT実現の鍵となるでしょう。

2020-06-11-7-iot-and-measurement-uncertainty-by-hiroyuki-nakano-

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