日本計量新報一面記事です。 2018年09月09日号(3208)1面 2018年09月02日号(3207)1面 2018年08月26日号(3206)1面 2018年08月12日号(3205)1面 2018年08月05日号(3204)1面 2018年07月29日号(3203)1面 2018年07月22日号(3202)1面 2018年07月15日号(3201)1面 2018年07月01号(3200)1面 |
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その28- 西宮工場にて掛長を拝命し計量と熱管理を担当する 「作業長や班長さんの査定は、あなた方が言っている事を信用しては行わない。あなた方の部下の仕事振りや日々の表情をみてあなた方の査定を行う」 西宮工場にて掛長を拝命し計量と熱管理の両方を担当する 熱管理と労務管理 神戸に帰ってきてから4年間、珪素鋼・カラー鋼鈑で主としてデーターロガーを用いた計装・自動化設計を担当した後、隣接する西宮工場にて掛長を拝命し、計量と熱管理の両方を見ることになった。燃焼機器・乾燥機・熱交換器などがあり、私にとっては初めての技術分野であったので、熱管理士の勉強をしながら、ついでに、当時問題になり始めていた公害防止分野にも分け入った。 管理課熱管理掛は3人の技師、作業長以下20余人の現業、女子も入れると30名ほどの世帯であった。しかし初めて直接の部下を持つことになったので、週の初めの朝礼などでは緊張して何を話すべきかを2~3日前から考えたものである。新しい熱管理技術はさる事ながら労務管理の問題は、千葉に始まった人との付き合いは得意の方であったが、順全とした労務の仕事はそれ以上に特殊な問題も絡んでいて頭を悩ませた。 2回の賞与、能率給の査定は嫌なものであった。皆に良く付けてあげたいのだが、枠やら規約があってそれができないからである。1、2年経った頃であっただろうか、班長会議の終わりの方で、ある班長が私に「掛長は何を持って我々の査定をされているのか」と尋ねてきた。 私は自分の労働観とは「能力に応じて働き、必要に応じて貰えると言うことだ」と前置きした上で、「作業長や班長さんの査定は、あなた方が言っている事を信用しては行わない。私はあなた方の部下の仕事振りや日々の表情をみてあなた方の査定を行う」と答えたものであった。何事も忌憚なく話せるのが良い職場で、それで人は成長するのだと考えていたし、時には皆と一緒に風呂に入ったりもした。 このような仕草の背後には日頃より、製鉄工場の中にあって、計測・計量の仕事は、溶鋼を何t出したとか、鋼鈑を何t圧延したとかとは全く異なる質のものだと考えていた。従って「計量管理」での人材育成とは、やはり自分と同じ視野を持って貰うことではないであろうか、と思っていた故である。 ノミュニケーション 新入社員の頃、千葉製鉄所の計量整備掛にて「これが仕事?」と驚いたり、「それにしても酷いことだ」と嘆いたとき、年配の作業長が慰めてくれたことにより始まった私の現業での仕事の倫理学も、若手の掛長になって1ステップ上昇したのか、1ステップ下降したのか。いまだに難しい問題である。 私の倫理学には、ノミュニケーションがあった。必須科目ではなかったが、かなり大きな領域を占めていて、よく誘い合って街に行ったものである。当時は顔の利く店ならば給料払い、ボーナス払いで良かったものだから気軽に立ち寄れた。今のように何かと窮屈な時代ではなかったのが何よりであった。 職場の皆さんと共に過ごした、春の花見や、日本海への夏の海水浴と釣り、冬は蟹すき旅行、今となってはそのような楽しい事だけが想い出される。 (つづく) 私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版) 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その28- 西宮工場にて掛長を拝命し計量と熱管理を担当する 「作業長や班長さんの査定は、あなた方が言っている事を信用しては行わない。あなた方の部下の仕事振りや日々の表情をみてあなた方の査定を行う」 |