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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その18- 川崎製鉄(株)最初の職場は計量整備掛
「始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。これ程恵まれた仕事の与えられ方はない」
現場に配属される
川崎製鉄(株)に就職して最初の職場は、計量整備掛であった。
最初課長から、「高徳君は計量整備掛に行ってもらう」と聞いたときは一瞬がっかりした。新設備の計装設計に憧れていたからである。
けれども、一年前の実習のとき親切に教えて下さった人が、「いや始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。あなたにとってこれ程恵まれた仕事の与えられ方はないよ」と忠告してくれた。
その後20年・30年続いた大きな意味での計量管理の仕事のスタートとしては、良い処に回してもらえたと、今でも当時の課長に感謝している。保全・整備の現場で直に計測機器にさわれたこと、大学を出たばっかりの青二才の私に作業長以下の現場の人達が実に親切に教え、また従ってくれたからである。
あれもこれもが勉強の毎日
受け持ちの主設備は、製鋼関連の平炉工場と建設途上の転炉で、これらに酸素を送る酸素工場と、副原料である石灰工場が付いていた。1000ループの計測機器があっただろうか。交替勤も入れて30名位の部隊を受け持つ技師となったので、正直言って初めは解らぬ事が多く、作業長や班長には助けてもらった。
とはいっても技師である以上、私も毎朝1時間は早く出かけて取扱説明書等を勉強したものである。土日も休日もなく働き、1~2カ月に一日くらい休んだであろうか。とにかく、製鉄所というのは365日溶鉱炉から溶銑が出っ放しで、全ての設備が止まるということがない。何かといえば若者が使われるのだから、仕方がなかった。正月も出かけて行くと、そこは人間社会、餅が焼けたから食べに来いとか、汁粉を作ったので寄って行け、と誘われたものである。
最初の仕事は溶鋼の温度測定
私が就任した当初、溶鋼の温度測定にはカーボンスリーブに保護された0.5mmΦのR熱電対が用いられていた。重くて、慣れない私では持ち上げるのがやっとで、それを炉の溶鋼の中に浸漬するのは到底無理な話であった。また、これはCOガスによる汚染によって熱電対が劣化し起電力が落ちてくるので、3回使えば我々の仲間が先端を切り取っていた。重いし、手間がかかるし、測温結果はバラツキがあるなどの難点があったが、当時では最新の技術に違いはなかった。
R熱電対の技術習得
当時は、このR熱電対にしても、入荷時には必ず検査を必要とした。日本にはメーカーがなく、輸入業者も信用がいま一つで、放っておけば何が入ってくるか解らない時代であった。
この入荷検査は、学振(日本学術振興会)製鋼第19委員会第2分科会推奨のパラジウム線溶融法によるもので、プラス・マイナスの素線の先にパラジウム線を付け電気炉の中心部に降ろして溶融させ、その時の温度を読み取るというもの。細心の注意を要する難しい作業である。私はまずこのテクニックを体得し、製鋼担当の技師として一人前になった気がしていた。
(つづく)
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その18- 川崎製鉄(株)最初の職場は計量整備掛
「始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。これ程恵まれた仕事の与えられ方はない」
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私の履歴書 高徳芳忠 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録(日本計量新報デジタル版)
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その1-はじめに
西宮高校から神戸大学の計測工学科に進み川崎製鉄千葉製鉄所で計量の仕事を始める
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その2-我が家と計量の係わり
祖父の高徳純教が「はかり屋」を始め社名に「メートル」を用いた気概に敬服
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その3-「異人さん」と「神戸メートル協会」
母は大阪の船場の商家の生まれで、“こいさん”(末娘)として育った
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その4- 父(忠夫)のはかり屋「高徳衡機(株)」
裕福な青年期を過ごした父は祖父が始めた「はかり屋」の跡を継いだ
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その5- 私の誕生は1936(昭和11)年9月である
私が誕生したのは神戸の御影という阪急とJRに挟まれた静かな住宅街であった
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その6- 1943(昭和18)年、私は魚崎小学校に入学した
疎開列車は家族揃って城崎温泉に湯治に行ったときと同じ流線形の蒸気機関車
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その7- 1高徳家の由来
酒醸造や両替商を営みかつ庄屋でもあったのが我がご先祖、姫路藩ご用達となり苗字帯刀を許されたらしい
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その8- 疎開地・丹波での小学生時代
疎開先で雑音と音声の途切れる玉音放送をラジオ屋の前で聞き後で戦争に負けたのだと教えられた
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その9- 田畑を耕し薪採りをした中学時代
高校1年生になる1952年までの10年疎開地に居着くことに 1949年に湯川博士のノーベル物理学賞
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その10- 父のはかり屋への復帰
私は京都府立福知山高校入学後の3学期に編入試験を受けて兵庫県立西宮高校に転校した
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その11- 西宮での高校生活
2・3年生の担任は英語教師である「英語は丸覚えなり」と指導され、これに従って何とか様になった
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12- 文学への傾倒
浪人時代お金はない。参考書代が小説代に化けていった。父は「芳忠には小説を読ませるな」と。
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12-2- 牧師と教会の人々
私を育ててくださった他大学の関西学院小林信雄氏ほかの偉い先生方
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その13- 楽しき神戸大学での学生生活
ボート部では艇が走る水音とスピード感、漕ぎ疲れ艇庫に戻る時の疲労感と達成感に浸る
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その14- 国立大初の神戸大学「計測工学科」に進む
J・トムソン(英国)の言葉「科学は計測に始まる」に感激、「科」とは禾(か)(稲・麦などの穀物の総称)を斗(容量の単位)るに学をつけて科学
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その15- 時代の要求で生まれた「計測工学科」の名が消えた
神戸大学「計測工学科」は「システム工学科」に、今では「情報知能工学科」になっている
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その16- 3年夏休みの工場実習は川鉄千葉工場へ
「石を投げれば37(昭和37年入社)に当たる」学卒大量採用の年度に川鉄に採用決定
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その17- 千葉製鉄所管理部熱管理課に
「千葉製鉄所管理部熱管理課に勤務を命ず」という辞令をもらい、「特急つばめ」で東京に向う
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その18- 川崎製鉄(株)最初の職場は計量整備掛
「始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。これ程恵まれた仕事の与えられ方はない」
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その19- 消耗型熱電対の導入
計量整備掛に就いて1年も経っただろうか、次は消耗型熱電対が入ってきた
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その20- ドイツ人と計測技術の導入
端子台に及ぶまでドイツ独特の技術レベルの高さに敬服したものであった。
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