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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その19- 消耗型熱電対の導入
計量整備掛に就いて1年も経っただろうか、次は消耗型熱電対が入ってきた
検定の新技術を開発
計量整備掛に就いて1年も経っただろうか、次は消耗型熱電対が入ってきた。これは従来のカーボンスリーブに換えてクラフト紙を硬く巻いて断熱性を持たせ、補償導線と先端のコネクターを保護している。中には0.1
mmΦのR熱電対が仕込まれており、全体的に軽く、先端のみを使い捨てるタイプであった。
これを5~6社が相次いで使って欲しいと持ち込んできた。この新型熱電対に対して、しかるべきテストを行ない、その中の1社に決めるのはまた難しいことであった。素線はどこ製か、アニーリングはされているのか、から始まって、試用結果に至るまで、新入社員の私にとっては結構な負担であった。
受け入れ検査にしても、従来の0.5mmΦの検査はこれまで通りの担当がやっていたが、新しい消耗型の0.1mmΦであれば、今までと同じ手法では検査できない。そこで、まず検査に使う0.1mmΦでのパラジュウムを日本のメーカーに作ってもらった。そして、私が自ら挑戦し、在来の技術を持っている担当と意見を交わし、失敗を繰り返しながらも、この0.1mmΦでのパラジュウム検定を成功させたものである。
1社に絞り込む
一つのツールであるセンサーを取り替えようとすると、その原理が同じでも使い勝手が異なれば導入はできない。オペレーターにも試用をお願いして、どんどん使ってもらった。紙スリーブが太くて溶鋼の中で浮力が生じて使いづらいというのもあった。この意見を各社に伝えると、応答が速い社と何の返事も来ない社の2つに分かれた。後者はダメ……。先端部を細く仕上げて浮力を少なくしたメーカーが有利となった。
次には、熱電対素線のメーカーとの繋がり、これが最重要であるので、ルートと線引き処理方法を調査した。他に新しいスリーブを装着すれば常温を指し「ピー」と音が出るのも現われた。保守性に優れている。このようにしてメーカーとユーザーが情報を交わし、お互いが工夫をこらしていくところに新しい技術が生まれ、製品が誕生する。
メーカーの言うことは信用ならない頃であったから、その辺の情報確認を含めてほぼ1年はかかったであろうか。ようやく1社に絞り込んで採用が決まった。
思わぬメリット
この消耗型熱電対の何よりのメリットは、溶鋼に浸漬するとすぐ測温され、熱電対は溶融し消滅してしまうので熱電対の汚染がないことであった。さらに思いもよらなかったメリットは、浸漬したところの温度が測定され、今までのようにオペレータが高いところ、低いところを選ぶことができなくなったことである(湯面の上面は高く、鍋のレンガ際は低かったので、それまでは、ベテランのオペレータは都合の良いところに温度計の先端を持っていったこともあった)。測定すべきは溶鋼の中央部の代表温度で、偏った箇所での温度ではないので、これは大きなメリットであった。
この仕事は、計量屋とは自分の部下だけでなく、オペレーターとも仲良くしてあらゆる方面から情報を集めることが大切だと痛感させられる機会でもあった。
(つづく)
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計量整備掛に就いて1年も経っただろうか、次は消耗型熱電対が入ってきた
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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その1-はじめに
西宮高校から神戸大学の計測工学科に進み川崎製鉄千葉製鉄所で計量の仕事を始める
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その2-我が家と計量の係わり
祖父の高徳純教が「はかり屋」を始め社名に「メートル」を用いた気概に敬服
私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その3-「異人さん」と「神戸メートル協会」
母は大阪の船場の商家の生まれで、“こいさん”(末娘)として育った
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その4- 父(忠夫)のはかり屋「高徳衡機(株)」
裕福な青年期を過ごした父は祖父が始めた「はかり屋」の跡を継いだ
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その5- 私の誕生は1936(昭和11)年9月である
私が誕生したのは神戸の御影という阪急とJRに挟まれた静かな住宅街であった
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その6- 1943(昭和18)年、私は魚崎小学校に入学した
疎開列車は家族揃って城崎温泉に湯治に行ったときと同じ流線形の蒸気機関車
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その7- 1高徳家の由来
酒醸造や両替商を営みかつ庄屋でもあったのが我がご先祖、姫路藩ご用達となり苗字帯刀を許されたらしい
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その8- 疎開地・丹波での小学生時代
疎開先で雑音と音声の途切れる玉音放送をラジオ屋の前で聞き後で戦争に負けたのだと教えられた
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その9- 田畑を耕し薪採りをした中学時代
高校1年生になる1952年までの10年疎開地に居着くことに 1949年に湯川博士のノーベル物理学賞
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その10- 父のはかり屋への復帰
私は京都府立福知山高校入学後の3学期に編入試験を受けて兵庫県立西宮高校に転校した
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その11- 西宮での高校生活
2・3年生の担任は英語教師である「英語は丸覚えなり」と指導され、これに従って何とか様になった
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12- 文学への傾倒
浪人時代お金はない。参考書代が小説代に化けていった。父は「芳忠には小説を読ませるな」と。
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12-2- 牧師と教会の人々
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その13- 楽しき神戸大学での学生生活
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その15- 時代の要求で生まれた「計測工学科」の名が消えた
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その16- 3年夏休みの工場実習は川鉄千葉工場へ
「石を投げれば37(昭和37年入社)に当たる」学卒大量採用の年度に川鉄に採用決定
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その17- 千葉製鉄所管理部熱管理課に
「千葉製鉄所管理部熱管理課に勤務を命ず」という辞令をもらい、「特急つばめ」で東京に向う
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その18- 川崎製鉄(株)最初の職場は計量整備掛
「始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。これ程恵まれた仕事の与えられ方はない」
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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その20- ドイツ人と計測技術の導入
端子台に及ぶまでドイツ独特の技術レベルの高さに敬服したものであった。
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