高原の夏とジョウビタキ
|
高原の夏とジョウビタキ 甲斐鐵太郎
ジョウビタキは冬鳥で日本にはシベリアから渡ってくることになっている。
高原の夏とジョウビタキ 甲斐鐵太郎
ジョウビタキがヤマモミジの青い葉が繁る枝に留まった。尾を振り、羽を震わせ、ときどきピョコンとお辞儀をする。
高原の夏とジョウビタキ 甲斐鐵太郎
高原のテラスで二時間ほど林を眺めていた。2024年7月31日、東京は30℃を越え、あちこちで危険な暑さの38℃になっているのに、ここは23℃。標高1,600mの八ヶ岳山麓の避暑地に長くいると東京の暑さを忘れる。出かければビルの日影を這うように歩くのだから暑いとはこのようなものかと思い出す。
蝶々の動きは速い。二時間ほどの間に2頭が東から北に抜けていった。ヒョウモンチョウらしいのだが確認できない。この庭あるいは立木には花はない。蜜がないから蝶は風のように通過する。
ハルゼミが啼かなくなって、せわしい夏の蝉が啼いていたが今日は啼かない。唐松の幹が時折揺れるので上空を風が吹き抜けていることがわかる。音のない世界で聞こえるのは耳鳴り。20年も前に東大からやってくる女医の診察を受けたら左右の聴力の差によるものだと取り合わない。夜になれば向こうの池でカエルが騒ぐのが聞こえるのに音がない昼には耳鳴り。
ジョウビタキがヤマモミジの青い葉が繁る枝に留まった。尾を振り、羽を震わせ、ときどきピョコンとお辞儀をする。変だなあ、夏なのに。初夏のころからジョウビタキはテラスの前の林に姿をみせていた。変だなあ、変だなあ、今ごろはバイカル湖の周辺で雛を育てていなければならないのに。
標高1,600mのところにも、そして標高850mの大きな病院の樹木でもジョウビタキをみた。一週間前のことである。
私のジョウビタキの思い出は京都駅八条口前にある新都ホテルの中庭である。正月15日ころにこのホテルに宿泊することが15年以上も続いていた。朝食の後のコーヒータイムにジョウビタキは小さな庭にやってきてあの仕草をするのである。そのようなことでジョウビタキは冬の鳥であり、私にとっては京都は八条口前のホテルの鳥なのである。
夏の高原でジョウビタキを目にすると、一瞬ながら自分の知識が間違っているのかなと思う。調べればやはりジョウビタキは冬鳥で日本にはシベリアから渡ってくることになっている。東山魁夷の絵画の御射鹿池(みしゃかいけ)に夏でもマガモがいる。鳥も動物も一つのことで区切ることができない生態を持っているらしい。ジョウビタキは八ヶ岳山麓などで夏を過ごし、雛(ひな)も育てる。バイカル湖なんか遠いから行かないもん、とモノグサを決め込むようなのだ。仲間のルリビタキだって同じようなのかも知れないと思うようになった。八ヶ岳高原音楽堂がある海ノ口自然郷のシンボルはルリビタキである。夏が売り物の別荘地に冬鳥かよ、と思ってはいるのだ。
高原の夏、霧ケ峰高原の夏を象徴する野鳥はノビタキなのだ。だけどジョウビタキが平然と日本の夏に居座って雛を孵(かえ)しているから見ている側は大いに戸惑う。
[資料]
吉村順三邸 軽井沢の山荘2 (mirutake.sakura.ne.jp)
吉村順三邸。主室となる二階居間からの南側の眺め。鳥になったような気分になる山荘という考えで設計された。標高1,000m。
2024-07-31-summer-in-the-highlands-and-the-daurian-redstart-
├
├
├
├高原の夏とジョウビタキ 甲斐鐵太郎
├ミズナラの木とドングリ 甲斐鐵太郎
├
├森と野鳥(シジュウカラ)の子育て 甲斐鐵太郎
├森の小屋に喫茶室をつくる 夏森龍之介(3)
├山荘に喫茶室をつくる 夏森龍之介(2)
├
├山荘に喫茶室をつくる 夏森龍之介(1)
├
├信濃への美しき旅 長野県立博物館と善光寺 甲斐鐵太郎
├
├ここは高原 季節が一気にはじけて春がきた 甲斐鐵太郎
├
├東山魁夷の絵画「緑響く」と御射鹿池 甲斐鐵太郎
├
├新緑の風かおる五月五日の城端祭り 甲斐鐵太郎
├
├計量計測データバンク ニュースの窓-59-私の上高地 安曇野 松本と信州
├
├【文書版】5月の連休に安曇野を遊覧する | 「計量計測データバンク」ニュース - 楽天ブログ (rakuten.co.jp)
├
├槍ヶ岳 安曇野の空に浮かぶ 甲斐鐵太郎
├
├安曇野の夏、8月18日には稲が実りかけておりました 執筆 旅行家 甲斐鉄太郎
├
├美ヶ原が松本駅からよく見える | 「計量計測データバンク」ニュース - 楽天ブログ (rakuten.co.jp)
├
├五月 春の陽光の安曇野 大町市 執筆 甲斐鐵太郞
├
├2020年3月の松本市長選挙の結果と松本市の概要 旅行家 甲斐鐵太郞
├
├美ヶ原高原と春の雪 執筆 甲斐鉄太郎
├
├アカシアの白い花が咲いていた 執筆 旅行家 甲斐鉄太郎
├
├松本市と松本城そして穂高連峰 執筆 旅行家 甲斐鉄太郎
├
├国道158号線 松本市に向かう冬の旅である 執筆 甲斐鐵太郎
├
├大王わさび農場を冬至の日に訪れる 執筆 甲斐鐵太郎
├
├上高地夏至のころ 執筆 甲斐鐵太郎
├
├上高地 晩夏
├
├私と上高地-その6-上高地賛歌 八ヶ岳登山で山の自然に魅了される 甲斐鐵太郎
├
├上高地 錦秋の梓川の流れ 甲斐鐵太郞
├
├散りゆく唐松林の向こうに銀嶺の穂高連峰が輝いていた 甲斐鐵太郞
├私と上高地-その6-上高地賛歌 八ヶ岳登山で山の自然に魅了される 甲斐鐵太郎
├
├私と上高地-その5-格好いい山男は女に好かれる 山で英雄になった男の物語 執筆 甲斐鐵太郎
├
├私と上高地-その4-槍ヶ岳・穂高岳登山と上高地 執筆 甲斐鐵太郎
├
├私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く 執筆 甲斐鐵太郎
├
├私と上高地-その2-登山とロマンチズムそして感傷主義 執筆 甲斐鐵太郎
├
├上高地讃歌-その1-私の上高地そして小梨平 執筆 甲斐鐵太郎
├
├標高3000mに集まった人々 人それぞれの人生が垣間見える 執筆 甲斐鐵太郎
├
├メルヘン 森と泉がおりなす世界 青木湖 執筆 甲斐鐵太郎
├
├北アルプス 廃道寸前の伊東新道を湯俣温泉に下った1979年夏 執筆 甲斐鐵太郎
├
├湯俣温泉「晴嵐荘」の都はるみとオーディオ 執筆 甲斐鐵太郎
├
├6月24日、松本市波田のスイカを買う 温室栽培の大玉スイカです
├
├信州をぶらぶらする 青い麦畑に風の姿がみえた (麦畑は風が吹くとその姿を麦の穂が写し取った)
├
├松本駅前の昭和横丁でホルモンを食べる 松本山雅FCファンがやかましい店だ
├
├槍ヶ岳 霧ヶ峰からの遠望(高原の秋の始まりのころ)
├
├北アルプス連峰の鹿島槍ヶ岳について 文章 夏森龍之介
├
├霧ヶ峰高原と日本アルプスの遠望 甲斐鐵太郞
├
├東京から松本行きのバスの執着地はホテルと酒場であった 甲斐鐵太郎
├
├上高地に似ている高原川の上流部 甲斐鐵太郎
├
├6月26日、カッコーが八島湿原で啼けば夏です 旅行家 甲斐鐵太郎
├
├信州の秋をめぐる 諏訪から佐久にでる 千曲川沿いを走る
├
├奥飛騨の新芽の背景は北アルプス穂高連峰の山肌であった
├
├山みちで老いたキツネにであう 旅行家 甲斐鐵太郎
├
├諏訪生まれの小口太郎と琵琶湖周航の歌 甲斐鐵太郎
├
├
├いつかの夏 夢の径 甲斐鐵太郎
├
├クマも鳥も虫も神である国の寒山の森の暮らし 甲斐鐵太郞 (ナチュラリストのエマソンとソローと、日本の自然のなかの田渕義雄さん)
├
├旅のエッセー集 その1 旅行家 甲斐鐵太郎
├
├旅のエッセー集 その2 旅行家 甲斐鐵太郎
├
[資料]
春の高山祭2024 からくり奉納(15日・午後2時〜) (youtube.com)
1,009 回視聴 22 時間前にライブ配信。春の高山祭の屋台組「三番叟」「龍神台」「石橋台」の3台によるからくり奉納を生配信します。伝統を受け継ぐ綱方たちが人形に息を吹き込み見事な早変わりや華麗な演舞を披露します。
春の高山祭り 甲斐鐵太郎
甲府盆地 釈迦堂の桜と桃とレンギョウの百花繚乱 甲斐鐵太郎
八ヶ岳の森と春を恋う叫び 甲斐鐵太郎
槍ヶ岳 安曇野の空に浮かぶ 甲斐鐵太郎
キツネ - Wikipedia
車山高原レア・メモリーが語る諏訪地方の狐の生態 (rarememory.com)
冬の高原でキツネに出会う 甲斐鐵太郎
旅行家甲斐鐵太郎の自然博物誌 (keiryou-keisoku.co.jp)
人は空の抜けた霧ヶ峰高原で少し気持ちよくなるが同時に虚ろさを感じる 執筆 甲斐鉄太郎
冬の霧ヶ峰高原で群れる日本鹿(ニホンジカ) - livedoor Blog(ブログ)
新美南吉と新美南吉記念館 執筆 旅行家 甲斐鐵太郞
晩秋の霧ヶ峰高原 霧に包まれたカラ松の高原道路を走る 執筆 甲斐鐵太郎
人は空の抜けた霧ヶ峰高原で少し気持ちよくなるが同時に虚ろさを感じる
軽四駆比較 スズキ・エブリイとスズキ・キャリイ 甲斐鐵太郎
2024-04-10-mountain-hut-at-altitude-of-1600m-and-computer-