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官僚制度と計量の世界(5)
Bureaucracy and Metrology-5-

目次 官僚制度と計量の世界 執筆 夏森龍之介

国家総合職と官僚機構
総合職は1年目係員、4年目以降係長級、9年目以降課長補佐級、18年目以降企画官・課長級と進む。部長職がある省庁とない省庁があり、審議官になる者の数は制限され、審議官を経て局長になる者は同期入省の総合職のうち少数である。事務次官には同期で一人がなれるかなれないかである。時には入れ替わりで二人がなることがある。

一般職は1年目係員、8年程度係長級、18年程度課長補佐級、以後はまれに係長級になる。室長は係長級であるが厚生労働省などでは室長を経て課長の職に就く。


官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介
(計量計測データバンク編集部)

官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介

官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介

(見出し)


官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介

(本文)

国家公務員の仕事の内容は役職に付属するもの 総合職と一般職にともに役職に応じた仕事をする


東京千代田区の霞が関官庁街 左手が経済産業省、その右が人事院そして厚生労働省などが入る5号館

国家総合職と官僚機構

 計量制度の運営に従事する国家公務員のうち国家総合職にある者を官僚と規定する。これは普通のことである。本稿でもおおよそはそのような扱いをする。しかし一般職の国家公務員と総合職のそれを比較するときに、その持ち場すなわちある係りにあってする仕事には大きな違いはない。官僚の言葉の解釈については別途取り上げることにする。

係員、係長、課長補佐、室長、課長

 総合職であっても係員、係長、専門官・課長補佐を経た後で、調査官・管理官、企画官・室長、課長、部長、審議官、局長、事務次官と進む。一般職は室長で留まることが多い。省庁によってことなるが一般には室長と課長には職階としての壁があり、室長を経て課長に昇進することが多い。

総合職は1年目係員、4年目係長、9年目課長補佐、18年課長

 総合職は1年目係員、4年目以降係長級、9年目以降課長補佐級、18年目以降企画官・課長級と進む。部長職がある省庁とない省庁があり、審議官になる者の数は制限され、審議官を経て局長になる者は同期入省の総合職のうち少数である。事務次官には同期で一人がなれるかなれないかである。時には入れ替わりで二人がなることがある。

一般職は1年目係員、8年程度係長級、18年程度課長補佐級、以後はまれに係長級になる。室長は係長級であるが厚生労働省などでは室長を経て課長の職に就く。

 以上は霞が関勤務の本省職員の事例である。

経済産業省計量課の課長補佐の総合職は課長昇進前に兵庫県の商工労働部長として出向


兵庫県庁庁舎 地上13階、地下2階(1~3号館)、地上5階(西館) 1号館1966年、2号館1970年、3号館1990年竣工

 総合職を幹部候補とは人事院は公式には言っていない。実際には幹部候補である。昇進の仕方と異動分野などが違う。総合職が昇進は早く、異動分野が広い。40歳過ぎに参事官から地方公共団体である県の副知事に、いわば出向することがあり、戻ると極の総務課長になることが普通になされている。経済産業省のある計量課長と結婚している人がそのような道を歩んだ。退職時は消費者庁長官であった。一般職ではこのような事例は皆無である。

 仕事内容は職階に応じており、総合職も一般職も変わらない。現在はコピー取りなどは減ったが入省初年の総合職であっても一日中コピー取りをしていたものである。総合職は若いうちに都道府県に出向して、関連する部門の課長の仕事をすることが多い。課長級に昇進するころには出向先では部長職に就く。経済産業省の計量課の課長補佐をしていた総合職は兵庫県の商工労働部長として出向していた。

一般職は20年ほどの経験を積んで課長補佐級に昇進

 総合職の係員がその職階において政策立案の仕事などできるわけがない。係長級になって総括係長などになれば多少はそれも有り得るが、単独でそれをするのではない。総括係長は総合職に与えられることが多い。それぞれの分担領域で課長級の下で仕事をするのであり、係長でも政策立案の業務に従事する。一般職は20年ほどの経験を積んで課長補佐級に昇進する。20年の歳月を課や局を移動しながら省庁の業務経験を積む間には専門知識を積み上げ、業務に熟達する。この間に課長の指示の下で政策立案の業務にも従事し、省内や省庁間の調整業務も行う。国会対応業務も総合職と変わりなくする。

一般職も国会対応業務に従事、議員への説明もする

 国会に設けられている委員会での説明は課長級が行うのが普通である。課長の説明のための文書を書き、資料を集める業務を一般職が行う。議員からの資料要求に応じて作業するのも一般職である。資料を携えて議員会館に出向いて議員に説明をする。議員の多くは事情に疎く、政策能力は乏しい。委員会での議題と質問主意書の作成を関連する省庁に求め、その委員会における大臣ほかの答弁書を同じ省庁の職員が作成する。この業務には総合職と一般職とも変わりなく従事する。係りに関わる事案にそれぞれ対応するだけのことである。

 以上のようなことで人事院が述べる総合職は政策立案、一般職は定型業務の執行というのは、結局は職階における業務内容のことであり、課長級、それ以上の幹部の立場にある者がその業務を執行することを指して政策立案と言っていると解釈できる。

一般職35歳係長の年収は460万円、総合職35歳課長補佐の年収は740万円

 国家公務員本職勤務の一般職35歳係長の年収は460万円ほどというある事例が報告されている。総合職35歳課長補佐の年収は740万円ほど。残業の仕方でこれに積み増しされる。河野太郎の一括とそれへの対応によって国家公務員には残業代がほぼ満額支給されるようになった。一般職41歳の係長のある人は残業続きの年の年収は960万円であった。

 あの有名なひろゆきが言う。メシウマを望む日本人ということで、公務員の給料が減ると大衆は気分が良い、と。ひろゆきの父は税務署職員でバブル期には相対的に安月給だったと述べる。年収が1,300万円とタクシーの運転手の答えに東大教授は自分が哀れになった。

国家公務員の深夜残業をもたらしている原因

 国家公務員の深夜残業をもたらしている原因は何か。基本は国家公務員本省の人員不足である。人員配置が足りないことが原因である。ひろゆきが言うメシウマを望む日本人の心が民主党政権にあった。メシウマとはあの2チャンネル用語で、公務員などの給料を減らすなどして人の不幸を見ていると気持ちよく飯が食えるという意味のこと。

 民主党は政権担当時の2011年度の国家公務員一般職の採用人数を2009年度の9,112人に対して半分に減らした。2011年には4500人の採用削減を実施した。地方出先機関を主に減らすということであったが、結局は本省職員の数の現象という形で現れた。東日本大震災以前に計画され実行された採用削減である。それから13年が経過した。35歳前後の一般職係長級の層が薄くなったために各省庁は経験者の中途採用によって対応している。厚生労働省の本省ではこの数年、年間50人ほどの係長級の中途採用をしている。それでも深夜残業は減っていない。

 国家公務員の深夜残業の原因の一つは国会対応である。その内容は国会議員が自分で調べられるものを全て省庁職員たちに頼っていることが多いな原因である。日本の国会議員の質は低い。見栄えの良い学校歴、職歴は得票に都合がよく、選挙人はそのことだけでと投票する。自治省官僚で鳥取県知事、民主党政権で総務大臣を2010年9月から 2011年9月までつとめた片山善博は、民主党の幹部の経験不足を指摘する。弁護士、弁理士など小さな組織しか経験していない大臣、総理大臣は、大きな組織を動かす能力が不足していた。日教組を動かしてきた幹事長の輿石東(こしいし あずま)に安定感があったという。輿石東は悪い人間ではないが風采のあがらないぶっきらぼうである。このことを近所に住んでいる私はよく知っている。片山善博が総務大臣から外れると同時に民主党政権は国家公務員一般職の採用人員を半分に減らす政策を実行に移した。

堺屋太一が言う官僚制度はトンネル

 通産官僚だった堺屋太一が言った。官僚制度はトンネルのようなものだ。トンネルを次から次への官僚たちが通過していく組織だ、と。トンネルを通過する者はトンネル工事はしない。ただ抜けていくだけである。だからそのトンネルの在り方を問題にしない。

 トンネルは官僚制度として置き換えられる。だとすればトンネルを替えなくてはならない。とくに制度が時代に対応できなくなった時にはこのことが必要になる。トンネルを通り抜けるだけの官僚たちにはトンネルを変える力はない。トンネルの在り方を変える役割は政治の側にある。このことを厚生省事務次官ならびに副官房長官を経験し、国家公務員制度に精通した古川貞二郎が語る。

社会転換期の国家公務員制度の変革

古川貞二郎


国家公務員制度の在り方を古川貞二郎氏が語る。厚生事務次官、内閣官房副長官であった。

 社会が大きく転換するときの国家公務員制度の在り方を古川貞二郎が語る。古川貞二郎(ふるかわ ていじろう)は、1934年(昭和9年)9月11日生れ。2022年(令和4年)9月5日に逝去。厚生事務次官、内閣官房副長官であった。内閣官房副長官として、村山富市、橋本竜太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の5人の総理大臣を支えた。内閣官房副長官在任期間は歴代最長の8年7カ月。九州大学在学中にも国家公務員採用上級甲種試験を受験するが失敗。郷里の佐賀県庁への入庁を希望していたが募集が行われていなかったため長崎県庁へ入庁。長崎県職員時代に国家公務員試験に合格して希望する厚生省を訪問するも面接で落とされる。「どうしても福祉の仕事に携わりたいので、長崎へは帰りません」と必死の談判をしたら、後日採用通知が届いた。霞が関の官庁の事情に通じた人である。

政治主導の中でも専門家集団としての官僚の知見を駆使せよ

 2019年当時の霞が関の国家公務員のの事情をNHKの取材に対して次のように語っている。

 「ちょっと信じられないことが起きていますよね。最近だと統計不正の問題、また森友学園のように公正中立が疑われるような問題、さらに財務省の幹部によるセクハラなどもあった。昔も不祥事はありましたが、質が変わってきたように感じます」

 「原因はいくつかあると思うんです」

 「昭和は右肩上がりの成長の時代でした。そうした時代には、毎年、必ず果実が生まれます。その果実を適正に配分することについて、官僚組織というのは最もふさわしかったんです。しかし、成長の時代が終わり国民に新たなニーズが出てくると、既存の資源や財源を付け替えないといけません。これには、法や制度の改正が必要で、やっぱり政治が行うことです。僕は政治主導は時代の必然だったと思うんです」

 「政治主導の中で、政と官の役割分担のあり方が非常にあいまいになってきたのではないでしょうか。行政はそこに戸惑っているように感じます。かつて、官邸の仕事は政策を作ることでした。だからAさんが申請している案件はどうなっているか、などといったように、個別具体の案件の執行に官邸が口を入れてくることは基本的にありませんでした。行政は公正中立でなければならない、同じ法律のもとでは公平でなければならないからです。もちろん、個々の政治家が選挙区の方に頼まれて、どうなっているとか問い合わせて来ることはたまにありましたがね」

 「いまは人口減少や、超少子高齢化、災害の多発、働き手不足など課題が山積しているうえに、判断のスピードも求められています。さらに今後、人工知能などの新しい技術で、社会が一変するかもしれない。第4次産業革命とも言われる時代にどうすればいいか、官僚が本来持っていた特長にかげりが出て、少し、すくんでいるんじゃないかとも思うんですね。もっと自分をエンカレッジして自己研さんする。なんで官僚の道を選んだのかということを自分に問い直す必要もあると思いますね」

 「旧厚生省の保険局長とか児童家庭局長として答弁した時は、何日も前からすごい緊張感があるんです。総理大臣をはじめとする各大臣の前、それにテレビを通じて全国民の前で答弁するわけですから。自分が担当する政策を徹底的に精査した結果、足りない部分も見えてきて、後につながるケースもありましたね。政策全体をどうするかなどについては大臣が答弁するのが当然だと思います。しかし、膨大な内容すべてを大臣が把握することは難しいです。特に、行政の執行上の責任については担当の局長がしっかり話したり頭を下げたりすべきではないでしょうか。また、細かい条項の説明も事務方がすべきだと思います。こうしたことが、実際上、官僚の士気を著しく低下させたのは事実だと思います」

 「今はひとつの政策の結果が出る前に、それが難しくなったら新たな政策を立ち上げますね。私は参事官時代も含めると官邸に15年勤めてきましたが、ある年までに、どのくらい達成するという数字を出すことに、歴代の内閣は臆病なくらい非常に慎重でした。それが達成できないと当然ながら非難されますよ。ところが今は平気で数字や達成年度まで示しますよね。だったらその数字は必ず検証しないといけない」

  「霞が関の良さはその構想力にあります。目標を据えたときに、自分たちの知恵を働かせて、よりよい社会の姿を描いていく。政治家は決して専門家ではありません。政治主導の中でも、官僚は専門家集団として、情報を的確に把握したり、知見を駆使したりして、政治に選択肢を示すのが重要な責務だと思います。それが官僚の使命感であり、責任感、そして気概ではないでしょうか」

官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介

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