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計量管理二題 自動はかりと校正システムの計量管理 計量士 阿知波正之
Metrological control of automatic scales and calibration systems by masayuki atiwa

-その1-自動はかりの検定について適正計量管理事業所の場合は検定の期間が6年とされ、その間は自主検査となる。自主検査について、検査業務の負担から周期を2年程度に長くしたいとする意見を聞くことがある。一般に自動はかりが使用されている適正計量管理事業所は生産量が多く、トラブルなく稼働を確保するためには比較的短期間での点検・整備が不可欠となる。これは計量士として担当している非自動はかりの定期検査でも生産量の多い食品工場の計量器が2年前の計量器と半数近くが入れ替わっている例を経験しており、生産量の多さに対応して自主検査周期を設定することが合理的である。自主検査の合理化として、単純に周期を延長することは損失が増加することが多い。

-その2-品質管理の国際規格ISO9001の要求事項から、測定器のトレーサビリティのための校正システムは整備されてきたが、正確さの保証の目的から校正結果が十分活用されていない無駄がある。計量士として経験することだが、校正分銅内臓型の電気式はかりの使用者が校正操作をしていないで使用している例が見受けられる。時間の測定では電波時計により、時刻合わせを意識しなくても実用的な正確さが維持されており、正確さが確保される。このように測定者が意識しなくても自動化された校正システムが望まれる。

計量管理二題 自動はかりと校正システムの計量管理 計量士 阿知波正之


(計量計測データバンク編集部)

計量管理二題 自動はかりと校正システムの計量管理 計量士 阿知波正之

計量管理二題 自動はかりと校正システムの計量管理 計量士 阿知波正之

計量管理二題 自動はかりと校正システムの計量管理 計量士 阿知波正之

-その1-
自動はかりと計量管理 計量士 阿知波正之

はじめに


 自動捕捉式はかり(以下自動はかりと称する)の検定がはじまり、自動はかりに関する情報に触れる機会が多くなり、特に計量士として検定業務への参加、適正計量管理事業所での自主検査など直接的な活動への関心が高いが、小生の企業の計量管理の経験から検査に使用される自動はかり(自動選別機)とその計量管理への活用について述べる。

自動はかりは高精度より高速化

 2024年7月に自動はかりの使用事業所の見学会に参加した。見学コースからの見学であり詳細を確認していないが、70g~80gの製品の全数選別に自動はかりが使用されており、3g程度の変動が認められた。該当の自動はかりは表示目量0.01gが使用されていた。測定物の品質管理として評価するとき変動幅を8~10程度に分類するとされており、実目量は1gではやや不足であるが0.2g~0.1gが妥当と考えられる。

 品質は検査で良・否を選別する考え方があるが、工業製品の量産工程では工程能力管理が行われており、工程能力指数Cpk1.33以上を目標として管理されている場合理論上不適合品の比率は0.006%となる。このことから商品の量目管理についても同様で、詰込み工程でのきめ細かい管理(目標値管理)が重要になる。工程能力管理がされていると不具合品はほとんどなく検査不要と考え易いが、予測できない原因で管理状態を逸脱することもあり、異常の早期発見が重要な役割となる。商品量目の先進的な工程管理が実施されている自動はかりは合・否の選別ではなく、不適合品を発見したときは生産ラインを即時に停止し、その原因を調査し処置を行う管理が行われている。

 高精度のはかりはそれに対応する環境を要求されるが、自動はかりの使用現場は加工設備の振動、搬送車の振動、冷却風など外乱(ノイズ)が多く、これらの外乱に対する頑強性(ロバストネス)が重要になる。さらに検査は製造工程との同期が求められる。したがって、検査を目的とする自動はかりは、高精度の選別ではなく、使用現場の外乱に対するロバストネスと生産性を向上する高速化が課題になる。

自動はかりの自主検査の周期

 小生が40年程前に製造工程に組み込まれた長さの自動測定器(機械式)について検査周期を1年に設定したところ6ケ月で故障が頻発した。その原因について測定器メーカと調査したところ、同測定器の設計寿命が該当工程の製品の生産数が6ケ月で超えることが分かり、当然の結果であった。対策として、より長寿命の非接触の光電式に変更した経験がある。

 自動はかりの検定について適正計量管理事業所の場合は検定の期間が6年とされ、その間は自主検査となる。自主検査について、検査業務の負担から周期を2年程度に長くしたいとする意見を聞くことがある。一般に自動はかりが使用されている適正計量管理事業所は生産量が多く、トラブルなく稼働を確保するためには比較的短期間での点検・整備が不可欠となる。これは計量士として担当している非自動はかりの定期検査でも生産量の多い食品工場の計量器が2年前の計量器と半数近くが入れ替わっている例を経験しており、生産量の多さに対応して自主検査周期を設定することが合理的である。自主検査の合理化として、単純に周期を延長することは損失が増加することが多い。

 さらに事業所内の自主検査は生産計画と調整し、稼働停止中に実施すれば、生産を阻害することなく、検査作業も生産阻害がなく短時間に実施できる。したがって適正計量管理事業所での自主検査は検査間隔を長くすることではなく、短期間の検査間隔を設定することが合理的な管理となる。

自動はかりの日常点検

 自動はかりが使われる製造工程は1日当たりの生産量が多く、自動はかりの異常を見過ごしていると、その処置に大きな損失を生じるため、経験的に日常点検が行われている。これは自動はかりと同様金属検出、異物の自動検査装置でも同様の点検が実施されている。

 自動はかりの日常点検は不適合標本(ダミー)を流動させ、確実に検出。排出できるか点検になる。商品量目の管理から下限値の標本のみの場合もあるが、上限値、下限値の標本を用いて、日々の生産の始業時及び終了時に点検を実施すれば確実に選別の保証ができる。

 この日常点検について、筆者の時代ではチェックシートによる管理で誤記入の問題があったが、現状ではリモートでより確かな管理も可能と考えられる。

自動はかりでの経験はないが、生産量の多い測定器の管理には校正された現物標準を使用して日常点検により上限値、下限値を点検し使用する自動測定器もあり、自動はかりの点検用の現物標本の質量の安定性が確保できれば、自主検査にも利用可能と考えられる。

自動はかりの検定の現状から--高速化と疑似試料

 2025年2月28日に開催された第23回全国計量士大会において、山本浩之計量士から検定業務に関わる最新の情報が提供された。その中から筆者は次の2点について関心があった。

 検定の実績から最高速度は200個/分とのことで、生産性の要求からさらに高速となることが予測され、それに対応する検査手法の蓄積が予測される。

 計量対象が冷凍品の場合は結露の影響から、形状・重心を配慮した疑似試料が必要との報告があった。数年前に地元計量士会の講習会で、日高鉄也計量士から3Dプリンタによる現物標準作成の発表があった、3Dプリンタの技術があれば、質量と形状を狙い通りの現物標準の作成が可能になり、今後の展開が期待される。

自動はかりのこれからと計量管理への活用

 自動はかりのメーカ試料によると、使用現場での振動への耐性向上が示されており、外乱に対するロバストネスの改善が進んでいる。事業所で使用中の旧型の自動はかりの検定について関心が高いが、検定受検のための整備費用を考えると新しい自動はかりへの更新が経済的には利点が大きいように思われる。

 自動はかりには自動測定器としての機能があり、対象商品の全数測定結果が記憶され、このデータから平均値と標準偏差及び測定値の分布(ヒストグラム)をリアルタイムで表示できるものもあり、管理図の理論から平均値と標準偏差の変化を分析することで、詰込み工程の異常または自動はかりの異常を検出できる。

 計量士の活動に商品量目の管理があり、量目検査の結果(合格)で終了していては管理活動としては十分ではない。自動はかりの測定結果を改善活動に活用し、成果を上げることができる。第一段階で商品の詰込み作業、商品の加工条件の標準化によりばらつき(標準偏差)を改善し、第2段階で平均値を目標値になるよう、詰込み量を調整することにより、コスト削減効果が得られる。また、ばらつきが十分小さい工程であれば加工速度を上げ、生産性向上効果も得られる。

 自動はかりは人手不足、生産性向上の観点から今後質量の計量の主役として急速に増加することが予測され、検定・検査に限らずその機能(働き)を理解し、計量管理へ活用することにより、大きな成果が期待できる。

-その2-
校正システムと計量管理 計量士 阿知波正之


はじめに


 企業における計量管理というと品質管理規格の要求事項から測定器の校正に関係者の関心が高く、また筆者の経験からも校正システムに関わる事項が多い、そこで校正システムと計量管理の考え方について述べる。

校正システムの自動化

 2024年11月14日に開催された第32回日本NCSL技術フォーラムに参加し、最新の校正システムに関する事例発表を聴講し、その中でオシロスコープの校正の自動化の事例が紹介された。

 筆者の経験では校正の自動化を最初に導入したのはデジタルマルチメータであった。当時Hp社から8bitのパソコンとHp-IBシステムが公開され、Hp-BASICのプログラムを作成し、標準器の制御とデジタルマルチメータの端子の接続以外は自動校正が可能になった、ただし当時はHp-IBを備えたデジタルマルチメータは少なく、表示の読み取りが必要な4桁のものが大半であり、パソコンで標準器を制御し、測定者がデジタルマルチメータの表示を読み取り、パソコンに入力する半自動のシステムとなった。

 その数年後、ドイツのメーカから、測定範囲60㎜、目量0.01μmのデジタル測長器が販売されたので、永年使用していた機械式の指針測微噐に変えられないか検討した。ブロックゲージは103個組の場合25㎜以下が100個あり、25㎜以下を偏移法で測定できれば測定作業が大きく改善できることから、データ採取の自動化を計画した。第一段階で常用標準のブロックゲージの1㎜から25㎜を測定し、その測定値を用いて測長器を一次校正式で校正し、次に校正対象のブロックゲージ1mmから25㎜の100個を測定し、その測定値を取り込み一連の過程をパソコンと組み合わせデータ処理を自動化した。パソコンのソフトはパソコンに詳しい若手の担当者がDOS-BASICでプログラム作成した。校正結果の不確かさに相当するばらつきの大きさは過去の指針測微噐による比較法と差がなく、社内校正に実用化できることを確認し、作業時間は大幅に改善できた。しかしその後、国際規格の適用から、審査時に標準化された校正方法以外の方法を適用する場合、その妥当性を示すことが要求され、ハードルが高く、作業時間が悪化する比較方に後退することとなった。

 現状校正の自動化について小生の経験からの進展が感じられない。その背景として、校正業務の同一繰り返し業務がないと自動化による効率化の効果が得られないためで、今後表示の読み取りの自動化により、長さ、質量、力学量、温度などの分野の自動校正の進展を期待したい。

校正室の管理

 2024年12月に名古屋市計量士会主催のJQA中部センターの県学会に参加し、最新の校正室、校正システムを知ることができた。その中で、長さ校正室は20±0.5℃で、管理されていると聞き、校正室の管理を思い出した。

 30年程前に校正室の移転(整備)の機会があり、施設部門に20℃の長さ、質量関係の校正室と23℃の電気量関係の校正室を中心に要望を提出した。特に長さ関係の校正室は20±0.5℃で管理できるよう空調システムが整備された。場所が地下室であったため、無人の環境は20±0.3℃は可能であるが人の入退出の影響があるため20±1℃の前室を経由し入退出し、入室人員を制限することとなった。

 校正室の空調設備は昼夜・全日運転であり連続稼働状況の無駄が多く改善の余地がある。また、20℃の標準温度は作業者による誤差要因と健康管理面から校正の無人化、標準温度範囲(スペース)の最適化について改善課題が考えられる。

校正業務の所属組織

 第32回日本NCSL技術フォーラムにおいて、電子部品製造メーカの校正業務の発表があった。同社は製品(電子部品)の開発とその生産設備(生産技術)も同時に社内開発されていると紹介された。品質工学の研究会に参加しているとき、食品の開発担当者から、生産性を飛躍的向上させる技術開発に成功したが生産工程の新設時に外部業者に生産設備を依存したため、短期間で競争力が失われたと聞いたことがあり、製品開発と合わせて生産技術の開発が企業の競争力維持に重要であることを再認識した。

 発表の中で、校正部門の所属が生産技術から品質管理部門に変更になったと聞いた。筆者が企業で校正設備を導入するとき新製品の生産動向に合わせて、新しい校正設備を計画したが、所属部門の理解が得られないとき、生産技術部門の支援を得て最新技術の校正設備を設置できた経験がある。品質管理関係規格の要求事項から、校正業務は品質管理部門の組織に所属することが多いが、新しい校正技術を重視するなら技術開発部門、生産技術部門など技術部門の組織に所属することが望ましい。

国際規格の適用

 校正業務は国際規格ISO17025の要求事項が適用されている。筆者は20年程前に製品試験へのISO17025の適用についての講義を担当していた。その中で①試験所の組織は試験結果が外部の圧力を受けることがないことがない信頼される組織。②データ(記録)の修正は修正前記録と修正者の記録保存を重点事項として解説していた。ところが近年報道されているデータ不正問題ではこの基本的事項が守られていなかった事例が報告されている。組織が整備されていても、そこに関わる人が誤った“忖度”意識があると難しく、人の意識からの基本事項の徹底が不可欠で、企業内の校正部門においても、定められた標準に従い校正作業を行い、結果を示す校正者としてのプロ意識が必然となる。

校正システムと計量管理

 校正の目的は測定における正確さの保証で、その目的に対して、校正の間隔(周期)、校正範囲(校正点)、校正式の選択は計量管理の計測設計の役割であり校正システムの問題ではない。

 品質管理の国際規格ISO9001の要求事項から、測定器のトレーサビリティのための校正システムは整備されてきたが、正確さの保証の目的から校正結果が十分活用されていない無駄がある。

 計量士として経験することだが、校正分銅内臓型の電気式はかりの使用者が校正操作をしていないで使用している例が見受けられる。時間の測定では電波時計により、時刻合わせを意識しなくても実用的な正確さが維持されており、正確さが確保される。このように測定者が意識しなくても自動化された校正システムが望まれる。

 自動車の国際規格の審査において、現場の測定結果からそのトレ-サビリティについて求められたと聞いたことがある。これは測定の正確さの確保の目的から至極当然と考えられる。校正範囲、校正間隔の最適化は校正システムの問題ではなく計量管理の重要な役割となる。

2025-04-04-metrological-control-of-automatic-scales-and-calibration-systems-by-masayuki-atiwa-

目次 官僚制度と計量の世界 執筆 夏森龍之介

官僚制度と計量の世界(24) 戦争への偽りの瀬踏み 日米の産業力比較 陸軍省戦争経済研究班「秋丸機関」の作業 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(23) 第二次大戦突入と焦土の敗戦「なぜ戦争をし敗れたのか」 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(22) 結核で除隊の幹部候補生 外務省職員 福島新吾の場合 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(21) 戦争と経済と昭和天皇裕仁 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(20) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(19) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(18) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(17) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(16) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(15) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(14) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(13) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(12) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(11) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(10) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(9) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(8) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(7) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(6) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(4) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(3) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(2) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(1) 執筆 夏森龍之介

ほか

[資料]国立研究開発法人産業技術総合研究所:役員および執行体制 (aist.go.jp)
https://www.aist.go.jp/aist_j/information/organization/director/director_main.html

[資料]

銀行券・貨幣の発行・管理の概要 : 日本銀行 Bank of Japan

財務省が第153次製造貨幣大試験を実施 令和6年10月28日、大阪市の造幣局で

第153次製造貨幣大試験を実施しました : 財務省

貨幣大試験 - Wikipedia

貨幣として機能した麻薬のアヘン

【明治銀貨13枚】ポチっとシリーズ。


計量計測トレーサビリティのデータベース(サブタイトル 日本の計量計測とトレーサビリティ)
2019-02-05-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書
2019-02-07-1-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-2-
2019-02-07-2-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-3-
2019-02-07-3-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-

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